昨日の中継で嬉しかったこと

 この日記にも書いてきたとおり、私の中では今年のツールは全然盛り上がっていませんでした。横綱と三役どころか前頭すらいない十両相撲と表現したり、誰一人マイヨ・ジョーヌを本気で狙っていないと書いたりもしました。


 テレビ中継や日記、ブログなどで「いよいよ盛り上がってきました!」「楽しいね!すごいね!」「やっぱりツールだよ!」などという言葉を聞いたり読んだりするたびに、どんどん自分の中では白けた気分になってきたのも事実です。
 だって、もりあがってないんだもん。本気で勝負しないんだもん。
もちろん単なる観戦者としてのブログや日記なら、主観の率直な表現でしょうから、それはそれで批判も貶しもするつもりはありません。しかし「盛り上がらないと困る人」、具体的には放送関係者や取材関係者。こういった人たちが「盛り上がってますね!」なんて言うのは、非常に空虚にしか響きませんでした。 だって盛り上がってないんだもん。
 一応伝えることの「プロ」ですから、本当に盛り上がっていれば「盛り上がっている」とか「楽しい」なんて言葉を使わずに、盛り上がり感や楽しさを表現できるはずです(一部、それすらできない「プロ」もいるかもしれませんが、基本的にはこの程度はできてほしい)。
 そのプロが「盛り上がってきました!」的表現でしか盛り上がりを表せないところに、今年のツールの中身のなさが現れているように感じます。



 そんな中で、昨日の放送。Sascha/栗村の黄金コンビ。この2人の中継が一番楽しい。
栗村さんが、あぁ本当にレースが好きなんだなぁ、と思える内容のことを延々と語ってくれたのが、じーんと胸に響きました。脳内変換や意訳がいっぱい入っていると思いますので、録画された方には前半からしばらく見てみることを強くお勧めしたいです。
 おおよそこんなこと。
  ・今年のツールはどのチームも本気じゃない
  ・チーム間の小競り合いとかちっぽけな負の駆け引きだけしかしてない
  ・チームの作戦としてもちぐはぐで稚拙。
  ・その中で昨日(一昨日)のランディスとフォナックは、王者の戦いをした。攻めて力で取った。
  ・「調子はいいよ。TTも行くよ!」というランディスの発言こそ、王者の発言。
  ・対するペレイロ塩の「TTでランディスに持って行かれるんだろうね」的発言を徹底的に酷評。こんな発言しかできない人にパリでマイヨ・ジョーヌを着て欲しくない。ふさわしくない、とも。


 もちろん栗村さんならではの気配りのきいた表現の中での発言でしたが、おおよそこんな趣旨を含んでいたと思います。聞きながら、嬉しくて涙が出そうになりました。 去年まではレースの中で、この涙が出そうな感覚を何度も味わっていたのだということを栗村さんの発言で思い出しました。 それくらいわくわくするものだったんです。ツール・ド・フランスって。 この数年間「7月は(まともに)仕事をしないよ」と私は宣言して、ツール最優先のスケジュールにしてきた、それだけの価値があったものなのです。なのに今年のツールは、そこまでの気持ちがおきなかった。直前の事件(というか疑獄というか)そのものの影響もあるけど、それでも誤解を恐れず言い切ってしまえば「たった数人がいないだけ」のこと。 私もずっと「その数人がいないから」つまらないと思っていたのだけど、昨日の栗村さんの発言を聞いて、「レースはこびそのものがつまらなかった」ことに確信が持てました。 それだけに栗村さんの話は胸にずーんと来ました。
 私も本や記事を書いたりその他「人に伝える」ことが仕事の一部である部分もあります。その際常に思うのは「伝える人は、その対象を "好き" じゃなきゃいけない」ということです。大好きなんです。その魅力をみんなにもわかってもらいたい。だから「伝える」んです。 
 栗村さんは本当にレースが好きなんだなぁということを日々の中継の中でも感じていました。でも昨日の「本気」の発言は、好きだからこそ、空虚な盛り上がりの演出に違和感を感じている人たちへの、強い強いメッセージだったと受け取りました。


 栗村さん。どうもありがとう! 嬉しかったんで、今度晩ごはんおごります。って面識があるわけじゃないですし、栗村さんはたぶんこれ、読まないでしょうけど(笑)。




 おかしいな。。 言葉が心に響いた、ということをひとこと書きたかっただけなのに、長くなっちゃった・・




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