人生生涯小僧のこころ

人生生涯小僧のこころ

人生生涯小僧のこころ

 金峯千日回峰を満行された塩沼さんの著作。塩沼さんは昭和43年生まれ。
なぜかこの本に呼ばれたような気がして、読み始めました。このように本に「呼ばれた」り、本と「目があった」りすることは時々あります。


 やることをやった人の言葉はひとつひとつが重く、色々考えさせられ、また、反省させられました。
 お母さんやお祖母さんの「自分が苦しいときにたった一杯の水でもご馳走になったら、そのご恩は一生涯、忘れてはいけない」や「実るほど頭を垂れる稲穂かな」「どんなに偉くなっても、人の下から行きなさい。皆さんにお仕えさせていただくという気持ちは忘れてはいけない」などの言葉が著者の原点になっているとのことで、まず本書の前半でこれらの言葉に共感。


 修行中には、「一歩一歩、『謙虚、素直、謙虚、素直』と」歩くように心がけていた話や、「何事も根気よく、丁寧に、ぼちぼちと。」という考え方なども、常日頃から自分が目指したいと思いながらも遙か道遠いポリシー。 素直になれないもんですね。くだらない意地だなって思いながらも。 謙虚になれないもんですね、なかなか。くだらない自尊心だって判っていながらも。 そんな当たり前の言葉を言われると腹立たしくさえ思うことも多いのですが、著者に言われるともう反発する余地はないという気にさえなるから不思議です。単なる言葉だけではないオーラのようなものがあるのでしょう。

 またお師匠さんから言われたという「行を終えたら行を捨てよ」という言葉には様々な本質が詰まっていると感じました。行をおこなった事自体を後日自慢に思ったり勲章だと感じたりしているようではいかん、そのために行をしているのではない。 行の中で得た「何か」を今後に生かしてもらいたい、という真意だと思いますが、とても良い言葉だと思いました。 これは今後しばらく事あるごとに使ってみようかなと思います。 自分自身に向けて、そして一緒に仕事したり悩んだりする仲間たちに向けて。



 惜しむらくはこの本の売り方。オビには「感動の声が続々寄せられています!」「発売後たちまち10刷!」 の文字とともに「39歳会社員」とか「64歳会社役員」とか「48歳医師」などの読者から寄せられた絶賛のお言葉がいっぱい並べられています。まるで「こんなに "良い" と言っている人がいるのだからあなたにも良い本であるはず」と言わんばかりのうさんくさいアピールですね(言うまでもなく何人かが良いと言ったという事実と私が良いと思うかどうかには何の相関もありません)。amazonから届いた瞬間に興ざめで期待の心が85%減となりました。。。 
 しかしながら売り方は下劣で俗悪な心が満載のように見えますが、本書の内容については非常に多くの示唆を与えてくれたものであることは改めて強調しておきたいと思います。


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