相手を思いのままに心理操作できる!

相手を思いのままに「心理操作」できる!―常に自分が優位に立つための「応用力」

相手を思いのままに「心理操作」できる!―常に自分が優位に立つための「応用力」


 なにやら妖しげでセンセーショナルなタイトルの本ですが、内容はまっとう。
読み始めたときはこの本の位置づけがよくわからず「小手先の手法ばかり紹介している薄っぺらな本だな」と、多少の戸惑いとともに感じていたのですが、途中で「これ!要するに "人は非合理な行動をする" っていう、行動経済学あるいは行動心理学の現実世界における応用じゃないか!」と気づいてからは読み進めるのが楽しくなりました。
 まさに先日読んだ「予想通りに不合理」と同じコンセプトです。 このように演出すれば、あるいはこのように事前に吹き込んでおけば、相手は「必ず」こういう行動を取る。「予想どおりに不合理」にはそういった人間の数々の不合理な行動が紹介されていました。この本はそれを対人関係に絞って紹介している本だと考えて良いかもしれません。
 同じことを相手に伝えるあるいはお願いする場合でも、特定の環境を事前に作ることが相手の判断に大きな影響を与えます。「だます」とか「ウソをつく」ではなく、伝え方を変えるだけでお互いハッピーになれるのならば、その手法はみんながその一部でも身につけることができればいいのにな、と本書を読みながらこんなことも思いました。


 私のお薦めは「予想どおりに不合理」を読んだあとで本書を読む、です。


奇しくも訳者の斉藤さんがあとがきで「(心理学を知る私には)本文の表現の裏にある実験やリサーチが透けて見えることもあり、つい、もっとこの実験について書けばいいのになどと、専門家として考え」たが、「しかし読者にとってはそんな実験の詳しい話よりは、それが実生活でどのように役立つかのほうに関心があるはずである」と本書の構成の妙に舌を巻いています。私は心理学の背景はわかりませんが、「誰に何を伝えるか」を判断し、的確に伝えるべき情報を絞り込んだ原作者の判断に脱帽です。


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