ファーストサーバ事件に巻き込まれて思うこと

 一部の世間を騒がせている「ファーストサーバ、預かっていたデータを全部消しちゃったぞ事件」。報道で情報が増えるに従って「こんなにいろんな会社が利用していたのか」と驚かされます。もうちょっとしっかりしたサービス会社を利用していてもいいのに、、、と思うような、大会社も含まれています。
 私も長いこと、ファーストサーバを利用していました。20日(水)の夕方から、POPメールが取得できないことに気づいたものの、たまにあることなので、すぐに直るだろうと特に気にしていませんでした。
 まさかの全消失。


 個人的には、もうどうでも良いことではありますが、ライトな契約者のひとりの立場として、記録を残して置いてもいいかな、と思い、本エントリをしたためます。

私のファーストサーバ利用法

 いくつかのサービス会社で、いくつかのドメインを運用している中で、ファーストサーバは「お遊び系」という位置づけでした。要するに、公開サーバとしてはあまり活用していなくて、主にメールやメーリングリストを中心とした諸活動。
 なので、RDBMS上に重大なデータがあるわけでもなく、ファイルシステム上に大切なログや情報があるわけでもない。そういう意味で、今回のファーストサーバ事件も、当事者のひとりでありながらも、どこか他人事のように遠くから見るような冷静な感覚があるかもしれません。
 後で紹介しますが、速攻で他社サーバをセットアップして、DNSの向きを変えてサービス再開できました。

失ったもの

 DBデータやファイルには損害はないので、メーリングリストのメンバリストが最大の喪失となります。最近投稿があった人はMLから拾うことができましたが、自動登録や自力でアドレス変更作業をしてくれた人はこちらでは判りませんので、失われたままになります。
 運営していたMLは、基本的にはウチワのもの(私自身がその集団や団体に何らかの形で属しているもの)ばかりだったので、参加の皆さんに「今回いなくなった人がいるかもしれないので、お互い声をかけあって!」とお願いすることで、次善の策が取れたと思っています。

得たもの

 いくつかのメーリングリストでは、今回のトラブル復旧の案内をきっかけとして、長らく停まっていた会話が再開しました。中には1年近く1通もメールが流れていなかったリストで、近況(と今回のサーバ対応に対するねぎらい)などのメールが飛び交い、結果としてなんだか良い効果もあったようなので、まぁプラスマイナスで、私にとっては今回のトラブルはオーケー(もうおしまい、の意)かな、と考えています。

やったこと

 21日(木)早朝。昨晩からの「おかしな挙動」が、どうやら障害であったことに気づく。どうでもいいけど、パズルサイトの http://www.nikoli.com/ が、うちと同じ症状で落ちているのを見て、ここもファーストサーバだったのだと知る。
 同朝。どうやら長引きそうだという感触。とにかくメーリングリストは復旧させたかったので、同機能があり料金もリーズナブルな、さくらインターネットレンタルサーバ「スタンダード」プランを契約。本来、2週間程度の無料利用期間があるのだけれど、無料期間中の制限や制約を調べるのが面倒だったのと、継続利用する意志はすでに決まっていたので、速攻振込。 もともとVPSや専用サーバを何契約かしていたので、そこに追加する形で、手続きはスムーズに。
 とりあえずDNSの向きを、さくらインターネットに変更して、午前中は用事があったのでしばし外出。


 戻ってきて、午後。とりあえず必要なメールアドレス(メールボックス)を作成。周知し、復旧完了。
 しばし仕事のため本件放置。


 夜、メーリングリストの復旧。拾うことが可能なアドレスをあつめてリストを作り、ちまちまと登録作業。自動返信するテンプレの修正が、以外と手間だった。
 順次、再開の案内を出して、最終のMLの案内を出したのが22日0時を少し回った頃。


 丸一日振り回された事に対する憤慨のようなものはありますが、利用範囲が限定されていたとはいえ、ほぼ当日中に移行対応完了したことに、自分の手際の良さや判断の早さを褒めてやりたい気分なのでした。

今回のファーストサーバ社の対応で不満だったこと

・障害自体。・・・と一応は書きますが、個人的にはある程度の障害やデータ損失はやむを得ない面があると割り切っています。全力を挙げて怒りをぶつけている人には「値段相応」という言葉を教えて差し上げたいと思います

・連絡が遅い。前日17:30頃から継続している障害に対して、メールでの【第一報】が届いたのが 翌日 15:25。言葉もありません。

・情報が出てこない。一晩経っても、何が起きているのか、どの程度深刻なのかなどの、状況を判断するための情報がほとんど出てきませんでした。待つのが早いか、当方作業のほうが早いか。そんな判断をしたいのです。「トラブってます、頑張ってます」なんて、そんなお話を聞きたいんじゃないの! 「なおせるかもしれません!」「やっぱりなおせません!」と二転三転したことに振り回された人も多いんじゃないかな。
 本件に関して、若干のフォローをすると、技術者としてなんとなくこの感情分かるんですよ。技術的に少しでも可能性があるのであれば、あらゆる手を尽くして復旧を試みたい、と。 「できない」なんて言葉は、最大限の工夫と努力を行ってそれでもできない時にするもの、あるいは、できないことを証明できる場合に限って使うこと、という姿勢。 
 ビジネス的には、不確実な発表をするよりも「できません!ごめんなさい!」と早いタイミングで言ってしまったほうが良い場合も、きっとある。 技術者は復旧に向けて最大限の努力をするのが仕事だけれど、その状況を適切に判断して適切な言葉で外部に伝える仕事をする役割の人が、ファーストサーバ社には居なかったのでしょう。
 「早くしかし正確に」伝えるために、おそらくは、現況をストレートに伝えるだけでは(というか今回のファーストサーバでは、大切な情報が欠落したまま、状況の不確定さだけがストレートに飛んできましたが)なく、想定されるブレ幅に対しての予防線を張った上での、素早い説明のあり方について考えさせられる事件でした。

・バックアップがバックアップの役割を有していない。
 バックアップと言うのは「どんなことが起こったときに」を想定して、その想定状況時にもデータが保全されるように、と設計します。今回のファーストサーバでは、おそらく「ハードウェアが壊れた時に」を想定して、別サーバにデータをコピーしていたのでしょう。結果的にこれが大惨事を招いたわけですが、私はこれ自体はさほど責められるポリシーではないと考えています。
 ただ、せめてもうひと世代、可能であればスパンの異なるバックアップを取るような設計ができなかったかな、という点は残念に思うところであります。たとえば日次のバックアップのほか、週次のものが別途あるなど。 せめて1週間前のデータでも(ないよりは)ずっとマシという利用者も多いことでしょう。
 追記:あと、バックアップがバックアップたり得るためには、同じ操作をマスターとバックアップの両方に【同時にはしない】ことも大切なのですが、効率を考えるとうっかりしてしまいそうなポイントですね。

今後

 私は既にさくらインターネットに、ファーストサーバで利用していた全サービスを移行済ですし、もはや何も困っていないので、本件に関しては「おしまい」の気分です。
 もちろん、返金があれば当然のように受けますし、その場合は「1ヶ月分」とか「3ヶ月分」ではなく、直近で支払った全額(私の場合は6ヶ月契約)とするのが当然だろうと考えてはいます。 まぁ実際には、言われたとおりの手続きをハイハイとやることになるのでしょうね。 やりとりや交渉などに時間をかけるのが勿体ない、というよりも、「もう関わりたくない」というのが正直なところなので。

さくらインターネットについて

 個人的には非常に信頼の厚いサービス提供会社です。時々トンチンカンな電話をいただくこともありますし*1、サーバトラブルもたまにありますが、事後対応が納得感あふれるのです。お金の話じゃなくて。
 一定以上のしっかりとした知識と経験を持った人たちが、ズルいことをせず、テキパキと対応してくれているという印象。 本当にそうなのかどうかは知りませんが、私の目にそう映っていることが重要なのです。 一台丸ごと借りているプランでは、RAIDトラブルもありましたし、そもそもの機器トラブル(ディスクは無事)もありましたが、どちらも数時間内で対応をしてくださり、その後の電話でのご説明でも、私も色々状況を知りたがるので色々聞くのですが、ごまかすことなくお話してくださることに、たいへん好印象を持っています。 サービス提供者なんだからそれくらいやって当たり前!という気持ちではなく、もはや「いつもありがとう!!」という気持ち。 
 ファーストサーバに対しては、これがないんですよね。実は他に借りている GMO 系のサービスも、そう。



 そんなわけで、さくらインターネットさんにお願いしているサーバがひとつ増えてしまいました。私の未来は、さくらインターネットさんにかかっています!よろしくおねがいしますよ!!
 ・・・・あと、、大切なデータは自力で別サーバなどにもバックアップしておこう、と、改めてバックアップの重要性に背筋の伸びた一件でありました。想定範囲は「もしもあの会社のサーバが丸ごとポシャったら!?」ですな。



 本件、おしまい。

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*1:さくらインターネット社員から「おまえが契約しているサーバの電源を引っこ抜くぞ」と間接的に言われたことがあります。伝わらないと思って口を滑らせたのでしょうが、こういった話は対象者の耳に入るものです。本エントリではさくらインターネットをベタ褒めしてはいますが、こういった、気分によって顧客のサーバの電源を抜こうとする社員がいる会社だということは、忘れてはいません