正直者はバカをみない

正直者はバカをみない―日本一の見本市ビジネスをつくった男の成功哲学

正直者はバカをみない―日本一の見本市ビジネスをつくった男の成功哲学

 様々な見本市を開催しているリーヂ・エグジビション・ジャパンの石積氏の本。 リードと言えば我がIT業界に関係するイベントも数多く開催し、「昔から普通にあって当たり前のように多くの展示会を仕切っている会社」という印象だったので、本書でそれを創り上げている過程や姿勢などに触れることができ、非常に興味を惹かれた。


 タイトルにもなっている「正直者」という姿勢はビジネスをしていく上で共感できた。正直かつ誠実であることはビジネスに限らずあらゆる人間関係においてごく当然のことであ、、、、って欲しいのだが現実にはウソ、不誠実のなんと多いことか。正直で行こうという提言をすること自体が、見下したような好奇の目で見られることさえある。 そんな現実世界だからこそ、石積氏の「正直者でいこう」という主張がすがすがしく感じたのだろう。
(後記で著者は「最初の原稿は自社の自慢だらけで不愉快だと言われた」ということを書いていたが、そんな不愉快な部分を除いたからこそすがすがしく感じることができたのかもしれない。 尤も、その不愉快な自慢だらけの原稿というのも見てみたい気もするが。 きっと「俺達はやることをやってきた!」という自信に満ちあふれた説得力のあるものになっていると推察している)


 見本市(展示会)に於いてもっとも重要な「正直」のひとつは、来場者数である。 盛り上げるための演出も必要であるから、来場者数を水増しして盛大に発表したい衝動にも駆られそうだが、リードはそれをしないらしい。 大きい数字を発表したい (1)「から、水増ししてしまう」 のと (2)「から、頑張って集客にはげむ」のでは同じ「大きい数字を発表したい」という願望であるが、それ対して全く異なる2つのアプローチになっているのである。 言ってみれば「目標達成できなかった際に事後にあわてて取り繕うか、達成できないことがないよう事前にできる限りのことを考え実施するか」の違いである。
 そういった石積氏の考え方が全社に浸透しているからこそ、これだけの規模のイベントを大過なく、拡大しながら実施し続けられるのであろう。 


 冒頭に述べた通り、正直にビジネスを広げていくのは難しいことも多い。だからこそ多くの会社や担当者が安易に「嘘」に逃げるわけだ。 だが本書で石積氏がそれをまっこうから否定する。 誰に喜んでもらいたくてこのビジネスをしているのかという「本質」が思考の根底にある氏の発想と姿勢に、共感した。