頭痛のタネは新入社員

頭痛のタネは新入社員 (新潮新書)

頭痛のタネは新入社員 (新潮新書)

 「ふむふむ、近頃の若者はこういうことを考え、こういう行動特性を持っているのか。なるほど。」と思ったら、もうオジサンの仲間入り。 かつて「新人類」の理解不能な行動が騒がれた時代の再来である。 一般に社会人としては「驚くほど仕事への意欲が低く、向上心もなければ耐える力も持っていないクズ」と位置づけられるようなものが、いまの若者の「ふつー」であるとさえ言っても良いようだ。 頭痛が痛い。


 本書はリクナビ関連の媒体をとりまとめていたという前川氏の著書。数多くの学生の行動に接してきているだけに、事例の豊富さとともに、ひとつひとつの事例自体にも説得力がある。最初の就職時に「転職に有利な会社はどこですか」と質問してきたり、ネット上で希望候補会社の情報を調べすぎて全然実際の行動を起こせない人がいたり、すぐに一人前の仕事を任される(それをこなせる能力がある)と勘違いしていたりなど、失笑を誘うに十分な例が紹介されている。
 しかし本書の神髄はそういった「しょうもない」若者を例に挙げて指を指して笑うところにあるわけではない。そういった若者を上手に受け入れられない上司側にも厳しい警鐘を鳴らしている。またそういった就業者体制になってしまった社会事情にも触れ、言い換えれば「教え下手、育て下手」vs「教わり下手、成長下手」の構図を解説している。


 以前本日記でも紹介した「社長よりも偉いもの(http://d.hatena.ne.jp/sakaik/20080501)」と併せて読むとより理解が進むだろうと感じた。 本書でややしっかりめの分析を把握し、「社長よりも偉いもの」でその若手の行動を上手に物語の中に取り込んでいるのを楽しめるだろう。


 本書自体は私の速度でおよそ60分前後で読むことができた。あまり時間のない人でもたいして無駄になる時間ではないだろうから、一度は目を通しておくといざ未知の行動パターンに出会ったときにもパニックを起こさなくてよいかもしれない。


[読んでよかった]++

.