セルフトーク・マネジメントのすすめ

セルフトーク・マネジメントのすすめ

セルフトーク・マネジメントのすすめ


 セルフトークって自分自身に語ることでしょ? ひとりごと、かっこよく言えば自問自答だよね。まぁ感情で行動しちゃう前に深呼吸しろってよく言うけどそんなもんかな。 ・・・・というノリで読み始めた本書。 まぁ大雑把に言えば間違ってはいないのだけれどもちょっとおおざっぱすぎる予測でした。


 ティモシー・ガルウェイの「インナーゲーム」(まだ読んだことはないがいずれ機会があれば目を通したいと思っています)における「セルフ1」と「セルフ2」。これは影の声セルフ1が実際に行動するセルフ2の邪魔をする例がよく出されますが、本書で著者の鈴木氏はこのセルフ1をさらに2つに分解しています。
 ひとつは、その考えにより行動(セルフ2)に悪影響を与えるもの。セルフトークAと呼んでいます。
 もうひとつが、その考えにより行動に良い影響を与えるもの。セルフトークBと呼んでいます。


 本書の大きな目標はこの「セルフトークA」をなくすことであると捉えてよいでしょう。俗な言い方をしてしまえば、マイナス思考(考えて何のためになるわけじゃないことや、考えることで行動が不自然になる等悪影響を与えること)をやめよう、に近いかもしれません(こう書きながら、いや、こんな俗な表現では表せないなと思ってしまうのですが。。) 俗表現ついでに書くと、このセルフトークAは自意識過剰から来ることも多いのではないかと感じました。 周りは何も思っていないのに「自分はこうでなければならない」と感じること、これこそがセルフAの発現の大きな要因だろうということです。


 本書ではこの「セルフトークA」について、「まずその存在を認識する」→「セルフAを変える」→「セルフBを使う」→「セルフAを減らす」→「セルフトーク自体をなくす」という流れで紹介しています。
セルフトークを「なくす」とは、いわゆる没頭した状態、よく「Zone」とか「Flow」とか言われている状態だそうです(この言葉自体、私は初めて聞きましたが、感覚的には分かる気がします。その事物に没頭し周りが一切見えなくなっている瞬間。 たとえば私は何度かシベリウスの2番を演奏したことがありますが、毎回最後のページに入ったあたりからフィンランドの広大な大地(見たことはないのでまったくの妄想です)の日の出が目の前に浮かび、いわゆる「入り込んだ」状態となる体験をします。音楽の流れに身を任せつつ、ごく自然に自分のパートの音が出ている状態。これに近いのかなぁなどと、本書を読みながら思いました。


 もう一点、自分の考えを変えることについて「アイデンティティーを失う」と恐怖感を持っている人に対するアドバイス、「ピュアセルフと呼ばれる本当の自分が核となって、その周りにアイデンティティがあるという構図を思い浮かべると、アイデンティティの喪失によって "自分" が失われることはないのだよ」という考え方は、これでスッキリする人も多いだろうなと感じました。こんど適切な相手がいたら使ってみよう(^^)。


 感情的に行動しそうになったらまずセルフトークAの存在を認識する。 漠然と「一瞬思いとどまれよ」と言われるよりもより思いとどまるポイントが明確になったぶんだけコントロールしやすいかもしれない、と感じました。


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