カウンセラーへの道〜訓練の実際

カウンセラーへの道―訓練の実際

カウンセラーへの道―訓練の実際

 以前の日記でこの著者の本の感想文を書きました。http://d.hatena.ne.jp/sakaik/20080425
 東山紘久さん。昭和17年生まれのカウンセラー。先日読んだ本で「人格を鍛えている」の言葉がビンビン心に響いてしまい、もうちょっと氏の著書を読んでみたくなり本書を手にとりました。1986年に書かれた本。


 少し思っていたのと違うのは、この本は副題の通り「訓練の実際」を紹介している本だったということ。この本を「カウンセラー入門」と期待すると、思惑と違ってしまうかもしれません。 実際の訓練で使用する手法を紹介し、レポート課題もある。そんな本です。ひとりで読んで雰囲気をつかむことはできましたが、実際の手法については、この本に書かれているような訓練を通して各自が自分に一番ぴったりなカウンセリングメソッドを自分自身で獲得していくことを目指しているために、あまり具体的に述べられてはいない。 


 とは言え、小手先の手法ではない本質により近い部分での「考え方」を知ることができるとともに、自分自身の型を発見するのは大変なのだということを、本書から思い知らされます。「聞く。聞く。聞く。」「堂々巡りになったら示唆する」をベースにしながらもクライアントとの距離感、自分の得意なシチュエーション等に応じて最適は人によって違うのだという一見当たり前のことに、気づかされるのです。


 本書の中で思わず膝を打った一節。
「それをクライエントに聞いたときに、クライエントはどう答えると思いますか。カウンセラーは、クライエントに質問する時には、その狙いをはっきりと把握し、いくつかの予想される答えとそれに対する応答を狙いに応じてあらかじめイメージしておく必要があります。(今あなたが言った問いに対して)どのような答えがクライエントから返ってくると思いますか」


 根底にある大切なことの価値観が同じなのだろうか、非常に考えさせられながら、かつ一定の心地良い感覚を抱きつつ、この本を読みました。



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