- 作者: 戸部良一,寺本義也,鎌田伸一,杉之尾孝生,村井友秀,野中郁次郎
- 出版社/メーカー: 中央公論社
- 発売日: 1991/08/01
- メディア: 文庫
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1984年にハードカバーで出版された本が、1991年に文庫本になったのが今回読んだ本。2008年3月には33刷だそうで、売れ続けている本のようです。
本書では、ノモンハン事件からミッドウェー作戦、ガダルカナル作戦、インパール作戦、レイテ海戦を経て沖縄戦に至るまで、それぞれをケースとしてその作戦立案上や遂行上の問題点を研究しています。
よくある歴史物のように「面白く読ませよう」という工夫があるわけではないので、読んでいる途中で時折しんどくなることもありましたが、全体として非常に興味深く引き込まれるように読みました。私にとっては、そもそもそれぞれの戦闘の背景自体をこれまでもほとんど知らなかったので、そういった「事実の把握」と本書が得意とする「それに対する分析」を同時に理解しなければならなかったために、多少読み進めるのに時間がかかったこともありますが、この周辺の歴史に興味があってすでに一定の背景ができあがっている方にはもう少しラクに読み進めることができるのではないかと思っています。
本書での指摘を、無理を承知で非常に大きくまとめてしまうと、「問題点」というのは以下のようなものがあります。
- 「気持ち」が物理的技術を上回れると思っていたこと。もちろん気持ちがしっかりしているほうが良いことは疑う余地がないが、気持ち「だけ」ですべてがうまくいくわけがない。
- 事実の分析において、気づいていながら都合の良い「公式な結論」にねじまげてしまったこと。「言いにくい」「立場上・・・」というプレッシャーが、心地よい結論へと導いたと推測される。
- その誤った「公式な結論」を事実ベースとして次の作戦を立ててしまっていること。「タテマエ」が先行するとこのようになってしまうという典型。一旦「あれは安全だ」と立場上言ってしまったために、明らかに不安全なものでもタテマエにより安全であることを前提とした作戦が立てられてしまうことがある。
- 判断を行うために必要な情報を、的確に収集する努力や能力の不足。
- あれもこれも欲しがってしまう。本来の最大の目的が希薄化されることにより、結局何物も得ないまま終わってしまうことがある。
どれも現代に於いても耳の痛い話だと感じました。
これらの「失敗の本質」を常に肝に銘じて、ビジネスを展開していきたいものです。
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