今年も、水準原点標庫の中にあるご神体(原点目盛)が公開されたので、見に行ってきました。今年はタイミング合わないかなと諦めかけていたところ、原因(ミーティング)を夕方以降に設定させていただけて、なんとか来ることができました。ご協力ありがとうございました。


昨年のブログ。
sakaik.hateblo.jp
初めての人もたくさん
6月3日の「測量の日」の関連イベントとして(コロナ期を除いて)毎年開催されている「一般公開」。普段は閉まっている標庫のフタが開いて、中をみることができるという、1年に1回だけの日です(近くの電子基準点の中身も見せてくれたり、近くにある予備の点の「四角いマンホール」を開けて中身を見せてくれたりもします)。こういうのをわざわざ見に来るくらいだから、好きな人、詳しい人が多そうな気もしますが、近くで話を一緒に聞かせてもらっていると案外そうでもない。油壺からココまで高さを測っていることに驚いていたり、電子基準点を初めて知ったり、という人も結構多い。地理地図測量への「はじめての体験」を提供できていて、そういう点でも本当に良いイベントだなぁと感じました。
個人的には「ここが日本の高さの基準(原点)なんですよ」という話に加えて、「ここ、法律(正確には政令)でちゃんと決まっている場所なんですよ。この"水晶板"とその線についても」というお話は強調したいところ。「法律で決まっているブツ」って結構スゴイと思うんですよね。
第二条 第十一条第一項第四号に規定する日本水準原点の地点及び原点数値は、次のとおりとする。
一 地点 東京都千代田区永田町一丁目一番二地内水準点標石の水晶板の零分画線の中点
二 原点数値 東京湾平均海面上二十四・三九〇〇メートル
説明が親切
毎年、地理院の方が結構たくさん(少なくとも6人よりは上)来て、1日中、来訪される方の対応をしてくださいます。訊ねれば色々教えてくれるし、1日何回か、マイクを使ってみんなに説明してくれるので、タイミング合えば聞くと様々な情報を得ることができます。本当にありがたいことです。時々、自分の話を聞いて欲しいだけのご老人に絡まれて(全然測量と関係ない話であることが多い)たいへんそうだなーと思いますが(笑)。
中の人とお話しできる貴重な機会なので、教えてもらいたいことがたくさんあったのですが、誰に聞くのがいいか迷っているうちに、引っ込み思案な私は今年は聞けずに帰ってきてしまいました。
ちなみに特に知りたかったのは、次の3点:
- "JGD2024" にもEPSGコード(SRSコード)が振られることになると思うが、誰がどう申請するのか。地理院さんがやってるの?
- 4月から正式に始まった "新しいジオイド"により標高が決められるようになったが、水準原点の位置づけはどうなる? 新ジオイド情報とGNSSの値から、この場所の24.3900メートルが正確に出る?油壺からの測量はこれからも続く? 今後のジオイド情報の更新予定は?などなど
- GPS機器(Spresense)でログを取ったところ「動いている時のほうがポイントが安定(進路がブレない)」「信号待ちで停まるとポイントがあっちこっち飛ぶことがある」「特にRの小さいカーブを高速で曲がったときなど、ログ(軌跡)が膨らみがちなように見える(気のせいかもしれない)」などなど。受信情報からポイントを決めているだけでなく、今までの進路を元に移動平均的なものとか予測位置みたいなものが使われいるのかも、と想像したのだけど、そんなことある?とかとかのGPS知識
説明パネルもいっぱい出されていて、たぶん初見ではノーミソ溢れるくらい情報たくさんです。
公開されるもの、見ることができるもの
日本水準原点標庫とその中身
標庫自体は公園の片隅に存在しているので、いつでも見ることができます。「この日」が珍しいのは、中身を見ることができること。
普段は閉まっている前のフタと後のトビラが開放されます。前のトビラの中には石の中に埋め込まれた水晶板。うまく写真が撮れてませんが、水晶板にはメモリがついていて、真ん中に「零分画線(ゼロ)」があります。少し離れたところから望遠鏡のような水準系で覗いて使用するので、上下にある 1,2,3...のような数字は逆さまに描かれています。

後ろ側のトビラもご開帳。

背伸びしてみると、表側の小さなトビラを見通すことができます。芯となる柱の上に六角形の石がありその上に水晶板が埋め込まれている石が乗っていることがわかります。

電子基準点
すぐ近くに電子基準点「東京千代田」があります。電子基準点には「これが原点です」のようなものはないので、全国に1300ほどある電子基準点のなかのひとつ、という位置づけのものです。

こちらの電子基準点も、普段は閉まっているフタをあけて中身を見せてくれます。商用電源→バッテリー駆動や太陽光発電による給電、複数キャリアの通信回線での常時データ回収→一定期間(数週間以上)この中にもデータ保存、といったようなバックアップ体制が何重にも施されています。「大きな装置がいっぱい入っているなぁ」と感心して見ていると、一番大きな体積と重量を占める2つの黒い物体は、バッテリー。

普段はフタが閉まっているので、全国にある電子基準点を見に行っても大概、このフタを見て満足して帰ってきます。特徴的なのは「No.」の部分くらいですが。

周囲の一等水準点(引照点)
日本水準原点のまわりには5つの一等水準点があります。「引照点」または「付属点」と言って、いわば原点のバックアップのような役割も持っています。甲乙丙丁戊の5つあります。多くは地下埋設で「四角いマンホールのフタ」の下に隠れていますが、この日だけフタを開けて中身を見せてくれます。
- 甲
原点標庫の真っ正面に位置します。ここだけフタをあけて中身を見せてくれました。


- 乙
標庫を背にした時に右斜め前のあたりにあります。

- 丙
標庫を背にして標庫前に立った時に真左に位置する場所にあります。コロナ前の一般公開日にはこちらのフタが開けられていたのですが、人通りが多い場所でキケンということになったのか、最近ではこちらではなく甲がご開帳されています。

ちなみに6年前の丙ご開帳の時の写真。甲もそうですけど、フタの四角と水準点の四角が合っていないんですよね。理由があってこうしているのかなぁ。
→【追記】地図と見比べてみたのですが、もしかしてカドが東西南北を向くように作られている??

- 丁
標庫を背にしたときに左斜め後ろの斜面のずっと先にあります。
「標庫に対面して左側の壁面」を背にして見た時の風景です。あそこです。

5つのうち、これだけ地下埋設ではありません。「よく見る水準点」の形をしています。

- 戊
標庫を背にしたときに左斜め後ろのあたり、階段を降りていって、車道のほうに向かって歩いた出口付近左側にあります。戊は以前は憲政記念館の建物の真ん前にあったのですが、憲政記念館の工事のために3年ぐらい前にこの場所に移転されました。移転作業(物理)をしたり、移転作業(測量)をしたりしているところ、見たかったなぁ。特に埋設しているところとか。

出会いの場でもある
「意外と初めての人も多い」と書きましたが、そうは言っても、やはり本当に好きな人も多く訪れるのがこの一般公開日。来場者の方と楽しいお話をさせていただく「一期一会の出会いの機会」となることも数年に1回ですが、あります。印象に残っているのは6年前にお話した高校生で、「学校が午前だけだったので急いで来ました!」と。とても詳しい子で、そうか6年経つと社会人になっていたり大学院に進んだりしているのか、今も地理地図測量を面白いと思ってるかな、専門家になっちゃったりしているのかな、などと思いを馳せました(基本的に連絡先の交換とかはしない。だって怪しいし・・・(笑))。
今年もひょんな事から来場の方とお話する機会を得ました。話してみると私と同じ「色々見に行きたい組」の香りがして、また超絶に聞き上手な方だったこともあってベラベラ話してしまいました。 たぶん全国の東西南北端の話とか、基準点の話とか、東経135度の話とか北海道の「北緯」モニュメント達の話とか、面白がってもらえそうだなと思いつつ、いきなりいっぱい話しても惹かれるので(少しだけこれでも)自重しました。自重、、、できていたのかな・・・w
いろんな資料を公開してるとお伝えしましたが、とりあえず入り口はこの資料が面白いかもしれません(speakerdeckを紹介しましたが、slideshareのものは結構docswellのほうに移していたので、そちらのリンクを)。
www.docswell.com
note(https://note.com/sakaik)のほうにも色々書いているので、中には面白い記事があるかもしれません。三角点だけでなく他の情報も多いのでノイズ過多かもしれませんが。。。。(今は、2年前に巡った「東経135度線めぐり」関連の話を、時間見つけて書いているところです)
そんな感じで、楽しくお話をさせていただきました。ありがとうございました。
まとめ
- 水準原点一般公開楽しかった
- 水準原点一般公開楽しかった
- 水準原点一般公開楽しかった
そういえばレベルで覗かせてもらえる年もあったけど、今年はなかったな。
いつか、一般公開以外の日でご開帳されている時に居合わせてみたい。点検とか油壺からの測量とかのときに開けている筈なので、「使っているところ」を見てみたいところです。こういうのを最近は動態展示って言うんでしたっけ?(違うw)
会場を後にし、いつも通り「だって さくら だもん」とかブツブツ言いながら桜田門駅から帰りました。この後、3時間予定だったミーティング&ディスカッションが4時間半近くになるという、双方併せて大変充実した一日となりました。

おまけ。
ルノワールも描いた水準原点(嘘)。

エッシャーといえばエッシャーな感じがしないでもない筆致。

マグリットらしい独特な孤高の存在感。みんな水準原点標庫が好きだったんだなぁ(嘘)。
