TechLION vol.41 参戦(登壇)

 2025年6月24日に開催された 『TechLION vol.41 〜コミュニティの終活〜』に呼んでいただき、出演者(登壇者)として参戦して参りました。
techlion.jp


 テーマが「コミュニティの終活」ということで、終わりかかっているような日本MySQLユーザ会に白羽の矢が立ったのだと思いますが、一応まだ日本MySQLユーザ会が終了するというプランはございませんので、その辺りを理解していただけましたら、この日お伝えしたかったことの半分は済んだようなものです。ということで残りの半分を・・・(と言って私の説明を開始しました(笑))。

YAPCさまさま

 一緒に登壇した kobakenさん。YAPC::Hiroshimaの主催ということで、この広島のイベントは私は「いち参加者」だったのですが、たくさんの刺激、出会い、食べ物をいただいた、印象深く大変お世話になったと感じているイベントでした(チケットの手配にお手間をおかけしましたので更に参加できたことが幸甚なイベントでした)。
 まず kobakenさんから、YAPCの歴史を紹介していただきました。私も 2015年のビックサイトでの「最後のYAPC」に参加していたので、運営側の最後にかける覚悟とも言える思いを、やはり大変だったんだなぁとの思いで聞かせていただきました。
sakaik.hateblo.jp

 今回イベントテーマは裏を返すとコミュニティの「継続」ということでもあります。そのための引き継ぎや継承、そういったところが課題となることが多いのですが、YAPCの場合は一旦完全に終わった、終わらせた、とのこと。その後改めて「やりたい」「どうしてもやりたい」という人たちで、前任者たちに助言やサポートをしてもらいながら新たに作り上げたということで、これも広い意味でひとつの「継承」の形かもしれないななどと感じました。
 私も、YAPC::Hiroshima は非常に有意義で楽しかったというのは前述したとおりですが、その後参加した YAPC::Hakodateでも同様の盛り上がりを楽しませてもらったので、もう私にとってYAPCは「デフォルト参加」イベントのひとつになったと言えそうです。(ちなみにリンクしたYAPC::Hakodateのブログは「前編」を書いたまま後編を書く時間が取れず、前夜祭までのお話しか書いていない(笑))

意外と知られていない面も

 来場者の方から、「私はPerlとはそれなりに付き合ってきたが、YAPCというのは今回初めて知った」という話がありました。いやいやあなたが知らないわけないでしょう、と思わず言いそうになったくらい情報通な方(だと私が思っている)なのですが、イイカンジにアンテナにひっかからないものというのはあり、運営者の端くれとしても、実施している広報チャンネルって意外と狭い範囲にしか届いていないのかもしれない、もっと工夫の余地があるのかもしれない、と思いました。イベントに来てくれた人たちを見ると「みんな楽しんでくれた」「盛り上がった」と感じるのですが、来ていない人(知っていれば来たかもしれない人)の存在は忘れがちだなと我が身を振り返りました。
 斯く言う私も、YAPC::HiroshimaでYAPCの復活に気づいたのですが、その前のKyotoの時にはアンテナにひっかかっていませんでした。

MySQLのお話

 kobakenさんの話に続き、私のほうから日本MySQLユーザ会(MyNA)について紹介させていただきました。自己紹介の中に入れた、noteのほうの地図(GPSロガーで取得したログ)で2時間くらい語りたくなる衝動に駆られましたが、無事抑えました(抑えてもらいました?)

ということで、noteの旅記録は以下のリンクからお楽しみください。Hakodateを含め、まだ書いてないのがたくさん。。。
note.com

 さてそのMySQLユーザ会。ユーザ会を「しっかり運営型」「のんびり運営型」に分けるとするならば、間違いなく「のんびり型」のユーザ会です。どちらのタイプも、ひとつのテーマ(ソフトウェア)に興味をもった人たちの集いという点は同じですが、そのためにお金が必要(だからちゃんと管理する仕組みを作ろう)という方向に行ったか、お金をかけない範囲やできる範囲でやりたいことをやろうという方向になったのかの違いと言えるでしょう。
 「のんびり型」と言っても、存在意義は一応あるのだというお話として、内向き、外向きの両面から紹介し、続いて、課題と感じている点をいくつかお話して私の発表パートを終えました。発表資料は以下に公開しているので、よかったらご覧ください。

speakerdeck.com

場を作る、空気を作る

 今回出演してMCのお二人、kobakenさん、来場者の方々とお話させていただいて感じたのは、みんな「場を作ることが大好き」ということです。場、空間、雰囲気、色々な言い方ができますが、その空間で楽しんでくれる人がいて、何かの出会いがあったりきっかけになったりできたら、めっっっっっちゃ嬉しいよね、という点で、ビンビンに共感しました。 来場の方も何らかのコミュニティに積極的に参加したり運営されたりしている方も多く、みんなヒトコト持っているよねぇ、というのが会場からの積極的な発言からも強く感じました。難しい面もあるけど、楽しいんですよね、コミュニティ運営やイベント企画。
 

閉じる予定はないけれど

 今回のイベントテーマは「終活」。実際にコミュニティを終わらせるとしたら、と思いを巡らせました。静かに終わらせても良いのだけど、上に書いたような感覚を持っている人たちですから、たぶん「コミュニティを終わらせるよ」と決めた途端に、逆説的ですが血が騒ぐのだろうなと感じました。つまり、「最後であることをネタとして、どんなこと(イベント)をやってやろうか」という感じですかね。何かをやりきってクローズしたいという思いとも言えますし、やりきるとかそんな感覚さえなく「最後なら当然なにかやる」という感覚かもしれません。MyNAの場合はどうなるのかな。考えた挙げ句、こぢんまりと(10人かそこらで)飲み会やっておしまいって感じなのかな。私がそれまでスタッフをやっている保証もないのですが(と言えるくらい新陳代謝したいところです)。あ、終わる予定があるわけではありません(2度目)。

前提の相違

 パネルディスカッションの最後になってからようやく、MC法林さんと私とでそもそも今回のテーマに対する前提が異なっていることに気づきました。「どう残すか」というテーマ。残したい人がいれば残せば良い(そしてその方法を今回語られたように検討していく)し、そこまでの熱量やこだわりがなければ(私としては「規定値としては」)頑張って改めて残す必要はない、というのが私の発想でしたが、どうも法林さんの話は「当然残すべき。ではその方法は」というところがスタートとなっている印象を受けました。一歩前の「そもそも残す "べき"ものなのか」という議論がないまま残し方の話になってしまったので、ちょっとその点は議論が一足飛びになってしまったかなという印象です。
 活動している中で、デジタル、紙を問わず多くの商業記事も出されているでしょうし、そういった記事が消えることもある。それらの中で残っているものがあればそれで良いし、消えたらそういうものだという判断は、確かに寂しさを感じる部分はありますが「まぁそういうもん」だと私は思っています。その中でも自分達の思いとして、あるいは何らかの義務感のあらわれとして「残したい」というものがあれば、その思いを満たすための手法を検討するという形かなと。
 といいつつ、私も「昔あったあの活動」に対する懐かしさから、最近実験的に(情報を見せるだけとして)サンプルで復活させたページがあるのですが(笑)。これは自分ひとりの活動とは言えども、ファイルをちゃんと保持していてよかったな、とは思いましたね(Bassoonという楽器の、おそらく日本最古の部類に属するページです: http://bassoon.japansite.net/ )。法林さんの「残したい」という思いは、こういうことなのかもしれません。

 あと、書いていて気づいたけど、もしかしたら「自分たちが作り上げてきたコミュニティ」であるものと「先人たちから受け継いだコミュニティ」とで思いの差なのかもしれません。だとすると、これは逆に、自分達が下の世代に引き継ぐ際にも発生してしまう感覚となる可能性もあり、もし引き継ぐことがあるならば「そういうのは気にしなくて良いよ。あなたたちのコミュニティだよ」と伝えることも必要なのかな、といま、思いました。

パネルテーマ

 パネルディスカッションでは9個のテーマが用意されていました。直前ではありましたが事前にテーマについては連絡をいただいていたので、一応色々考えて行きました。・・・がテーマすべてを会の中で取り上げたわけではなかったので、さくっとここでコメントしてみたいと思います。

テーマ:コミュニティに参加してきて良かったこと

 その分野に関する知識が増えたこと。自力と他力があるのですが、運営の場にいることで入ってくる情報量が増える。これが他力。一方、ひとから色々聞かれることが増えたり説明に立つ機会が増えることで、もっとちゃんと理解してお話したいなと思ったりして、意識的に他の分野よりも情報収集や学習に力が入る面もあり、これが自力。
 あと、コミュニティ運営していると、意外と「肩書き」が便利。イベントではじめて会った人にでも「MySQLユーザ会の運営やってます」で、なんだか相手が納得してくれた感じがするのと、とりあえずラベル付けして覚えてもらいやすくなったというのは得しているかな、と感じることがあります。

テーマ: コミュニティの継続に必要な要素は

 「好き」と「場」

テーマ: 文化とスキルの継承

 難しいテーマです。より若い世代が動いてくれる場を作れるとして、基本的には(これも逆説的ですが)経験ある年寄り連中が伝えすぎないことが大切かなと私は感じています。聞かれれば答えるし、依頼されればヘルプするという関係。 率直に言うと若い人たちの進め方は、ほんと段取りだったり手続きだったりがなっていなくて、見てられないことも多いんですよ、、、でもそこで自分が経験あるからと「あれはこう、これはそうするべき!」みたいなことを言い出すと、いつまでも自分で考えられない。継承するべきはノウハウではなく「思い」「空気」なのかなと思うのだけど、これも突き詰めると難しい。人にも依るし、そのコミュニティの空気にも依る。なので便利なことば「ケースバイケース」登場。 ほどよく甘えてくれる(聞いたり頼ったり)若手と、節度を持ってサポートする年寄り、という関係ができれば理想なのかもしれません。

テーマ:もしこれから新しいコミュニティを始めるなら

 企業主催型コミュニティ、企業支援型コミュニティ、ゆったり型コミュニティとある中で、手弁当での一定規模のコミュニティ運営はもう終焉を迎えていると感じます。なので、もし今後新しいコミュニティを作る機会があるならば、動いた人が動いたぶんに見合う、もう少し具体的に言うと、そのスキルの人がその時間かけたことに十分に見合う報酬が得られる、もうほとんど企業みたいな感じですけど、そういうコミュニティになるのかな、と予感しています。そういう「技術コミュニティ」、アリですかね。みなさんの意見もここは聞きたいところ。 企業が自社の儲けのためにやってる技術イベント、というだけになっちゃうんですかね、こういうのは。。
 会場でも出たけど、事業会社抱えて2億くらい儲けを出して、それでコミュニティ運営しちゃうみたいな「コミュニティ運営やるために一儲けしようぜ」みたいなのも面白いかもしれないですね。やるときは、とりあえず声かけてください(笑)。

テーマ:コミュニティの残し方

 「残し方」というテーマには個人的に思うところはない。必要なものなら残るし、YAPCみたいに再興する人も出てくる。残すのが大変になっている状態のときに無理矢理延命のようなことをして残すという発想は私にはない。たぶん消えるのみ。 ちょっと書き方が堅いな。「必要ないなら、なくなるんですよ(じたばたしない)」という感じですかね。

テーマ:コミュニティの成長とは

 様々なイベント等の運営経験を通して、コミュニティができることが増えてくると感じます。たとえば「○人規模の会場をおさえる」というのも、コミュニティとして経験がある(経験がある人がいる)のとそうでないのとでは大きく違う。一方で技術要素(コミュニティで語られる話題)としては、成長しちゃいけない面というのを個人的にはすごく意識しています。MySQLで言えばコミュニティで声を出してくれる人の興味関心は最新機能だったり、よりハイエンドな環境での負荷対策だったりして、今更 my.cnfの書き方とかインストール方法などの話題はほとんど出てこないのですが、今からSQLを学ぶ人、初めてMySQLをインストールする人たちにこそ積極的に参加してほしいし、情報発信してほしい。・・・・という思いを、うまく運営や企画に載せられていないのは課題です。。(今やっている Qiita Tech Festa 2025 のテーマ「【あなたの】はじめてのMySQL」は、そんな思いを乗せたものです)

テーマ:コミュニティメンバとの距離感

 イベントで語ったとおり「つかず離れず」。あくまでもそのテーマに関して興味を持ったから集まっただけ、一緒に活動しているだけなので、それ以外の例えば一緒に映画を見に行くとかバンド組むとかは、もちろん意気投合しちゃってそういうこともやるというのを否定するわけではないけど、基本的には不要というか、別の話だと思っている。
 自分の得意な部分をちゃんと知っていて、お互いが得意部分については「それ、私がやるよ」と言う、逆に「自分はそれ苦手です」と言える距離感、という感じですかね。ちなみに私は、飲み会とかのお店を予約するのが超絶苦手です(「えいや」でお店を決められないので、検索しまくったり調べまくったりして時間がかかりすぎてしまう)。

テーマ:コミュニティを辞めようと思ったことは?

 ある。 自分の至らなさが原因のお恥ずかしい話なのですが。。。
イベントの企画準備や出展などで大変な時に「みんなももっとやってよ!!!」と思わなくもないのですが、そもそも「これをやってほしい」って依頼をちゃんとしていないし、あるいは各地方のOSCに行ってほしいと言っても、それこそ経済的、時間的事情あり難しい人も多いです(これに関しては私だってかなりの無理してはいるのですが(笑)。でもそれは私が「やりたくてやっている」ことであることを忘れてはいけない)。
 ユーザ会としてこういう発信をしたい、こういうことをやりたいと思ってもそれを実現できる環境にある人はほとんどいない中で、それを「やらせてもらっている」という事を、忙しすぎると忘れてしまうのですよね。。お恥ずかしい次第。逆に「もーやだ」と思っちゃうような事であれば、やるよと言ってはいけない、という「ゆったり系力」をもっと発揮せねば、といったところです。

テーマ:コミュニティの閉じ方(解散)

 イベントの中では、閉じる際にそれまでの活動をどう残すか、というのがテーマとなってしまいましたが、このお題に沿って答えると、「静かに終了宣言して、サーバとかドメイン消して(契約をどうするかは課題だけど数年間は今まで通り個人負担で維持して)、活動が終わるのだろうな」というのが私のイメージ。前述したとおり、「終わる」をネタにして最後になんかイベントやってやろうか、という思いはありますが。
 一方、データについては、うちはメーリングリストの投稿履歴が一番の資産だと思いますが、これもそれぞれの投稿者のものという観点からは永久保存的な扱いはなく、サイト消滅とともに消えるのかなぁ。 技術的ノウハウについては、サイトよりもむしろ書籍という形で残している(「MySQL徹底入門」は一応「日本MySQLユーザ会」も著者に入っているのです。もちろんユーザ会さんは一文字も書いてくれないので、著者に名を連ねる人たちで書いているのですが)ので、やはりそれ以上に頑張って「残す」作業はしない気がします。
 もし、何らかの思いがあって閉じることがあるとすれば、その時の思いは伝えたいかもなぁと漠然と思っているので、記事にしてくれるサイトがあればインタビュー企画などを提案することはあるかもしれませんね。なお、当会をクローズするという予定は今のところ一切ありません(3回目)。


まとめ

 今回 TechLION にお誘いいただき「終活」というテーマについて考えるきっかけになりました。 あ、MySQLユーザ会をどうやって終わらせようかな、と考えているわけではないので、改めて強調しておきますよ(4回目)。
 また、規模は違えども「イベントという場」を作る思いや、そこで様々なご縁が発生することが嬉しいという思いを共有できたのが、非常に嬉しかったです。
ご挨拶させていただいたご来場のみなさま含め、引き続きよろしくお願いします。


追記

 Twitter(X)で結構いいこと言ったので、こちらにも貼っておきます。


ということで今日からのキーワードは「楽しくマイエスキューエる🐬」