日本水準原点一般公開2026

今年も国会議事堂の前にある日本の水準原点の一般公開日に見に行ってきました。今年は5月20日、水曜日。


展示(?)内容としては、水準原点のほうは、普段は締まっている標庫の前のフタと後のトビラを開けて、中を見せてもらえるというもの。 隣接する電子基準点も、フタをあけて中の機材を見せてくれるというもの。その他、周囲に複数ある補点(引照点)のフタ(四角いマンホールみたいなもの)を開けて中を見せてくれるというもの。 言ってしまえばこんだけです。 地理院の方がたくさん居て、説明してくださるのが嬉しいです。 人によって得意分野があるようで「そこはあまり詳しくないのですが」とか言いながらしっかり説明してくださるのは、さすがプロです。


今年も目玉は「標高ルールの改訂」

 地理院では、4年間かけて日本全国の重力を精密に計測し、各メッシュごとのジオイド高を算出しました。その成果をもとに試行を開始したのが 2024年の3月。1年間の試行期間を経て、昨年4月に正式に採用されました。昨年の公開日に引き続き、今年もこの話題が最大のアピール(?)ポイントだったようです。
sakaik.hateblo.jp

 標高については、このジオイドを把握したことにより、電子基準点のデータや各社が持つGNSS測定器などで標高が算出できるようになったけど、実は従来通りレベルを使って測量すると精度がヒトケタ違う(ミリだったか 0.1ミリだったか単位を忘れましたが)、だけど実用上は新方式で十分、との話でした。
 あと、この新標高に切り替わってからも、油壺からの水準測量は毎年行っていくそうです。片道50kmのルートを往復で、3ヶ月くらいかかるそうで、つまり1年のうち三ヶ月はあのルートのどこかで水準測量をしているわけですから、見学(遠巻きに)したかったら意外とチャンスあるのかな、などと思ったりもしました。

 ことしは甲点(標庫の正面位置)に標尺を立ててレベルで覗かせてくれたり、少し測量の雰囲気に接することができて楽しかったです。なお、標尺を木で挟み込んで立てているのが面白かったので「こうやって立てるんですか?」と聞いたら、これは今回の展示用にやっただけ、普段は手で持って水平を確認しながら測量するとのことでした。標尺は私がよく目にする伸縮式のものではなく、金属の一本モノでした。3mあるそうです。

 


電子基準点

 隣接する電子基準点もこの日は、普段見ることができない「フタがあいた中身」を見ることができます。水準原点のほうはある意味「モノがそこにあるだけ」なので開けても触られても問題なさそうですが、こちらは稼働中の電子装置。これを眺めることができるって、なかなかすごいことだと思います。
 

ちょうど先月発売された Interface誌にも、これらの電子基準点を紹介する記事が掲載されました。その記事中の「年1回、中身を見るチャンスがある」というのが、この公開日のことです。
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これだけ何度も公開日に来て、何回も、色々な人にお話を聞かせてもらっているのに、まだまだ知らないことだらけです。以下簡単に。

電子基準点はもう増えない?

 概ね予定していた観測点数として足りている。今のところ今後大きく観測点を増やすことは予定されていない。老朽化(ステンレスなのでそうそう傷まないけど、それでも修理や交換が必要なことはあるらしい)への対応、内部の機材の刷新(最新化)などはあるし、設置場所の権利者の都合で「移設」することはある。
 あと、検潮所に付属の電子基準点もいくつかあるのですが(あちこちにあるかと思ったら全国15箇所くらいしかないみたい)、それらについては今後廃止の方向になるみたい。検潮所そのものも予算が、とか他の組織との重複がとか、色々大変みたい(このへん私の理解違いがあるかもしれません)。今後の検潮所付属は、沖縄と油壺だけは残す方針だとか。その「P沖縄」の訪問記はこちら。
note.com

北海道で訊ねたのもあるのですが、まだ(?)ブログに書いていなかったみたい。そのうち書く。



三角点はもう増えない?

 一方の花崗岩の三角点はもう新規に設置することはないし、権利者の都合、都市開発の都合などで「邪魔」になった場合は撤去するものもある、なので基本的には今後減っていくだけ。

ここの三角点、色がきれいですね

 全国で見かける三角点のほとんどは、銀色に輝くステンレスですが、ここにあるのはクリーム色で風格のあるたたずまいをしています。これは、単に塗っているだけ、とのこと。様々な都合~多くの場合は土地の権利者の希望ですが~で色を塗ることがある。新潟の小学校に緑色に塗られたものがあり、児童らに「えんぴつ」と呼ばれて親しまれているとか。いま検索したら、十和田湖1も緑色だったらしいのですが、成果閲覧サービスで調べても十和田湖1という基準点はない(2はある)ので、廃止になったのかもしれません(十和田湖2は茶色に塗られていました;成果閲覧サービスにて確認)。

上空見開きが重要

 水平面から15度の見開きがあることが理想的。実はこの「千代田1」も精度がギリギリよくない(周りの木が成長してきた)そうですが、特に都会では少し離れた場所に高層ビルができて上空見通しが限定されてしまうこともあるそう。
「観測のために切ってください」と簡単にお願いできないことも多く、悩ましい。


今年は開催発表が遅かった

 例年この時期だろうと、発表がある前から自分のカレンダーには「(水準原点公開日?)」という予定を入れていたのですが、今年はなかなか開催発表されなかったですよね。1週間前だったか10日くらい前になってだったか、ようやく発表されたという状況でした(少なくとも私が毎日検索していた範囲では)。たぶん今後も大きな変更がなければ「5月の、最後から2回目の水曜日」という感じになると思うので、来年以降も行こうとする方は軽く念頭に置いておくと良いかも。
 なんで測量の日(6月3日)じゃないの? という声も時々聞かれますが、私も知りません。たぶん「6月3日当日は忙しい(何が?)」「6月に入ると雨の可能性が高まってしまうので、早めに開催」「早めに開催することで "来る6月3日は測量の日なんだよ"の告知になる」あたりじゃないかなと思っています。

 それにしても、翌日木曜日は朝からずっと続く大雨。当日が良い天気で良かったですね。

その他感想

 毎年、説明用の看板が風で煽られて倒されるんだけど、毎年全然対策を取らないというか、一部では現場の工夫で重りをくくりつけたりしてることもあるんだけどそれが全然引き継がれてなくて、毎年同じことを繰り返しているのがある意味潔くて面白いなと眺めていました(今年もよく飛ばされていた)。飛ばされそうなのを押さえたり、倒れたのを起こしたりするところから始まるコミュニケーションもあるので、これはこれで良いのですが(きらいじゃない)。

知り合いに会えたり会えなかったり

 私の知り合いも、知り合いの知り合いぐらいの人(要するに知らない人)も多く訪れるこの公開日ですが、見るところがそんなにあるわけでないので、トビラが開いた水晶板と裏側と、電子基準点を見て「ふーん」と言って退出、所要時間5分とか10分みたいな人も多くいるようです。よくて30分。
なので、同じイベントに足を運んでいるのになかなか出会えないのです。そんな中で、去年のこのイベントで知り合った方と今年再会できたのが嬉しかったです。彼女は「滞在時間約2時間」私も今年は「滞在時間1.5時間」と、平均よりも大幅に長い時間いるとは言え、そうそう会えるもんじゃない。
 長年私が疑問に思っていた「No1標石」について、地理院の方からお話を聞けたそうで、その内容を教えてもらいました。いわく、地下鉄を作る際に影響がないことを見るために、原点から少し離れたこの位置に2箇所、基標を作ったのだとか。 でもこの形、一般的な水準点のような丸ぽっちがついていなくて、どこをどう測ることを目的としたのか、いまひとつよく分かりませんね。

まとめ

2018年05月23日にはじめて訪れてから、何度となく来ている水準原点公開日。何度来ても良いものです。この日しかみられないという特別感もありますし、来場者の方の質問への説明を一緒に聞かせてもらうのも勉強になるし、「もういいだろう」と思いながらも来て見ると毎度新たな発見があります。地理院の中のみなさま、今年もどうもありがとうございました。