我孫子市の地番参考図がオープンデータとして公開!

 2025年9月24日、突然我孫子市のサイトに「地番参考図をオープンデータとして公開しました」という案内が掲載されました。
www.city.abiko.chiba.jpwww.city.abiko.chiba.jp

 「地番参考図」というものをあまりよく知らなかったのですが、法務省の登記所備付地図みたいに各筆ごとの場所や形、名称(地番)などを管理しているもののようです。登記所備付地図データ(以下MOJXML)には、特に我孫子市(千葉県全域も)では任意座標系のものが多く、つまりそれは各図面ごとに独自の座標系を持っているため全体をつなげて一枚の図面にすることはできませんでした。どうもこの地番参考図は全体で同一の座標系を以て管理されているようです(詳細本文にて)。ライセンスは CC BYです。「本記事で紹介しているデータは、我孫子市のデータを使用しています。データ取得元については本文で紹介しています」・・・・これでいいのかな?

データの取得

 市のサイトの案内に従ってG空間情報センターからZIPファイルをダウンロードします。
https://www.geospatial.jp/ckan/dataset/chibansannkouzu/resource/c5e08df7-31be-4a62-9825-38f44a29c4e9

 ファイル名が chibanzu.zip なのは、他の自治体のデータも今後公開されることなどを考えるとちょっとイケていないところ。
chibanzu_12222_abiko_20250101.zip とかをご検討いただきたい(ちなみに 12222が我孫子市自治体コードです。覚えやすいのでこの機会にみなさん覚えておきましょう)。

 ZIPファイルを展開すると以下のようなファイル群が出てきます。「みんなだいすき*1シェープファイル」でした。。よく問題にされるPRJファイルも存在していてよきよき。みんながシェープファイルについて楽しそうに語っている時、私は「でもそれって作業が面倒とか間違いやすいという不満が殆どで、実際のところ本質的なシェープファイルの不足は何なんだろう」と考えることも多いのですが、このリストを目の前にすると「いったい何種類のデータがあるのだ?おまえらひとつにまとまれ!!!」と思ってしまいますね。本質じゃないのだけど。

83,596,654 ABIKO_AN.DBF
       411 ABIKO_AN.PRJ
 6,399,780 ABIKO_AN.SHP
   800,060 ABIKO_AN.SHX
 6,391,471 ABIKO_AN_HIKI.DBF
       411 ABIKO_AN_HIKI.PRJ
 1,160,124 ABIKO_AN_HIKI.SHP
    89,324 ABIKO_AN_HIKI.SHX
   135,430 ABIKO_COM.DBF
       411 ABIKO_COM.PRJ
    10,404 ABIKO_COM.SHP
     1,388 ABIKO_COM.SHX
     1,948 ABIKO_COM_HIKI.DBF
       411 ABIKO_COM_HIKI.PRJ
       308 ABIKO_COM_HIKI.SHP
       116 ABIKO_COM_HIKI.SHX
   631,178 ABIKO_KOAZA_AN.DBF
       411 ABIKO_KOAZA_AN.PRJ
    48,356 ABIKO_KOAZA_AN.SHP
     6,132 ABIKO_KOAZA_AN.SHX
     2,521 ABIKO_KOAZA_HIKI.DBF
       411 ABIKO_KOAZA_HIKI.PRJ
       412 ABIKO_KOAZA_HIKI.SHP
       124 ABIKO_KOAZA_HIKI.SHX
   373,825 ABIKO_KOAZA_LIN.DBF
       411 ABIKO_KOAZA_LIN.PRJ
   232,444 ABIKO_KOAZA_LIN.SHP
     5,308 ABIKO_KOAZA_LIN.SHX
   157,166 ABIKO_OOAZA_AN.DBF
       411 ABIKO_OOAZA_AN.PRJ
    12,068 ABIKO_OOAZA_AN.SHP
     1,596 ABIKO_OOAZA_AN.SHX
   106,807 ABIKO_OOAZA_POL.DBF
       411 ABIKO_OOAZA_POL.PRJ
   246,748 ABIKO_OOAZA_POL.SHP
     1,580 ABIKO_OOAZA_POL.SHX
53,508,922 ABIKO_POL.DBF
       411 ABIKO_POL.PRJ
24,128,596 ABIKO_POL.SHP
   752,420 ABIKO_POL.SHX
   306,784 abiko_ROAD_POL.dbf
       411 abiko_ROAD_POL.PRJ
   908,644 abiko_ROAD_POL.shp
     4,372 abiko_ROAD_POL.shx

データの変換

 ひとつ前の記事「DuckDBをただShapefileからの変換ツールとして使う」の手順に従って各ファイルを変換します。
実際の作業は、以下のようにループを回して実施しました。ここではGeoPackage(.gpkg)へと変換しています。

SET datapath=D:\work\gis\chibanzu_abiko
for %f in (abiko_an ABIKO_POL ABIKO_AN_hiki ABIKO_COM ABIKO_COM_hiki ABIKO_OOAZA_AN ABIKO_OOAZA_POL ABIKO_KOAZA_AN ABIKO_KOAZA_HIKI ABIKO_KOAZA_LIN ABIKO_ROAD_POL) do (
    duckdb -c "load spatial;" -c "COPY (SELECT * FROM ST_Read('%datapath%\%f.SHP',open_options=['ENCODING=CP932'])) TO '%f.gpkg' WITH (FORMAT GDAL, DRIVER 'GPKG');"
)

QGISでの表示

 できあがった .gpkgファイルをQGISで表示してみます。色合いや形などのシンボロジを調整したものがこれ。

 この記事を読んでいる人の99.9996%は感動しないと思いますが、当地をよく知る人にとっては「おおおおお!!!!」と恍惚の表情でしばし見とれるような素晴らしい絵が出てきました。これぞ我孫子市
 あくまでも市が固定資産税管理のために作っているものなので、市がその用途として認識してない場所は描かれていません。国道とか県道8号線とか、誰もが地図を見るときに基準とする線が見つけにくいです。

 部分拡大してみると、各ポリゴンの中にポイントがあります。最初は代表点だと思っていたのですが、これは地番表示箇所であることを教えてもらいました。引出線もあり、狭くてその中に書けないものは、隣のポリゴン内に書くことになっているようです。縦長の地域はポイントが2つになり、2段にわけて記述するようデータが格納されています。フォント情報も含まれており*2、つまりこれらのデータを使うことで印刷レイアウトを再現できるようなデータであることがわかりました。面白い。

問題発覚

 きれいに我孫子市の形も描けたので満足していたところ、そういえば背景地図と重ねて見ていないことに気づきました。重ねて見ると・・・・

我孫子市、世界からはみ出してるし、びっくりするほど大きいし。

 元のデータは平面直角座標系9系の値として格納されていました。チーバくんの鼻先にある9系原点から見て我孫子市は右(東)にしばらく、下(南)に少しいった地点にあるので、概ね良い場所に表示されていることがわかります。 ・・・良い場所とか言ってる場合じゃないよっ!!!!

 これはつまり、PRJファイルに書かれている情報を今回使用した DuckDBのspatial extensionでの変換時には無視していることを示しています。実際に GeoJSONに変換して確認しましたが、やはり測地系の情報は入っていませんでした。いいところまで行ってるんだけどなぁ。。惜しい。変換時に追加のオプションを与えることで読んでくれるのか、そもそも .projファイルには対応していないのか、もう少し調査が必要です。

おまけ:各ファイル解説

ABIKO_AN.gpkg         地番表示箇所
ABIKO_POL.gpkg        筆境界線
ABIKO_AN_hiki.gpkg    地番表示用引出線
ABIKO_OOAZA_AN.gpkg   大字表示箇所
ABIKO_OOAZA_POL.gpkg  大字境界線
ABIKO_KOAZA_AN.gpkg   小字表示箇所
ABIKO_KOAZA_HIKI.gpkg 小字表示用引出線
ABIKO_KOAZA_LIN.gpkg  大字の中で小字に分割する線(線)
ABIKO_ROAD_POL.gpkg   「市が理解している道」ポリゴン?

ABIKO_COM.gpkg        不明。なんかの表示箇所?
ABIKO_COM_hiki.gpkg   上記のための引出線

さいごに

 とりあえず統一的な座標系に基づいた筆情報データであることを確認できました。各ファイルには「属性情報(いわゆるテーブルデータ)」もあるので、今後、それらの内容の把握に取り組んでみたいと思います。
 それにしても、これまでこういったデータの公開に積極的なほうだとは思えない我孫子市が、こんな素晴らしいデータを突然公開してくれたことに驚きました。しかも雁字搦めのライセンスではなく CC BY にて公開したのは、もう「我孫子市、オープンデータ最先端の市!」とアピールしてもいいと思います(ちょっと言い過ぎ)。今後も、市民の生活に役立つデータ、分析への興味を誘うデータの公開、そして定期的な更新に期待しています。
 なんで公開したんだろう。私が住んでいるからかなぁ(素)。そう思うことにしておこう。

我孫子市、現在の公開データセット数:1

*1:とってもよく話題にするという意味で

*2:ちなみに「MS 明朝」でした