YAPC::Hakodate 2024のスポンサーになりました

 僭越ながら、2024年10月5日に函館で開催予定の YAPC::Hakodate 2024 のスポンサーになりました。

と言っても、特に宣伝したいものがあるわけではないのですが、「あの聞いたことないアレ、なに?」と興味を持ってくださっている方(あるいは訝しく思っている方)もいると思うので、自己紹介がてら、このエントリをしたためました。

わたしのYAPC

 YAPC::Asiaの時代に2回ほど参加したことがありました。当時は知り合いが多くいた訳ではなく、ぽつねんと参加していたような気がします。他のITイベントと比べて非常に高い熱量に加え、「野性味」とでも表現したら良いのか、誤解を恐れずに言えば「元気すぎて、なんかこわい」という印象も(笑)。
 そして今年2月。時期や場所の条件がぴったりハマった*1ので久々に、YAPC::Hiroshimaに参加しました。終了後に皆さんのブログの勢いがあまりにすごかったので、ほんの出来心でリンク集を作り始めたら、やめ時がわからなくなって、壮大なリンク集ができてしまいました。ブログの多さはイベント満足度の証*2
sakaik.hateblo.jp

なぜ今回スポンサーになったの?

 広島に参加して、この素晴らしいイベントに感銘を受け、微力ながら開催を支えたいと思ったからです! というのはもちろんあるのですが、別にそんなありきたりの話を聞きたいわけじゃないですよね?*3 はい。 実は、前回の広島で、「諸々の都合がついたので参加したい」と決めた際、すでにチケットが入手困難なタイミングになってしまっていた折、myfinderさん(まいんだーさん)にお世話をしていただきました。まいんだーさんへの直接のお返しでは ないのですが(すいません)、その時に「次の開催では、協賛して恩返しする」と心に決めていたのでした(いわゆる恩送り)。そして今に到る。改めまして、まいんだーさん、その節はありがとうございました!

あなたはだれ?

 有限会社アートライの坂井と申します。大雑把にシステム開発屋を名乗っていますが、もっと大雑把に言うと「なんか良くするしごと」をしています。大雑把すぎて意味が分からないかと思いますが、基本的には この「なんか良くする」の意味を理解してくれる方々からのご紹介またはお引き合いをいただいて仕事をしています(あまり説明になっていない)。
 レイヤとしては「データベース」まわりをコア技術としています。と言ってもパラメタがぁ~とか超負荷時への対応がぁ~とかはあまりメインではなく(一応やりますし話を聞くのは好きだけど)、「データ構造」や「データの流れ」を正しく整備することで業務やサービスが適正に回るようにするところを得意としています。
IT屋の開発チームや会社の経営等(データの流れ等で)のお手伝いをすることもあるし、非ITの会社さんや非ITの部門などに入り込んで業務改善のお手伝いをすることもあります。
 細く長くやっていて、会社はこの6月で無事27期を終えて現在28期目です。(会社のページも特に必要性がないのである時期から廃止してしまったのですが、こういうところに名を連ねさせていただくことを考えると、やはりちゃんと作ったほうがいいですよね...。スポンサー申し込んだ時に、何の情報もない知らない会社からだと運営さんを悩ませてしまったかもしれないと思うと申し訳ないです*4

データの流れは業務の流れ

 かようにデータベースレイヤから世の中を見ているので、基本的な視点は「業務(システム/サービス)とはデータの流れ」です*5。データが新たに発生し、それを参照したいシーンがあり、変更されたり追加情報が生まれたりして、消滅する。そのデータの流れに対応できるデータ管理を適切にやりさえすれば、業務は流れるのです。というのは言い切り過ぎかもしれませんが*6、DBがしっかりとデータを管理できる状態でなければ業務が崩壊する、という言い方ならば納得する方も多いのではないでしょうか。 (ということで実際には、ユーザとの対話を行うためのフロントエンドを上手に設計できる方や、結果を上手にユーザに見せるビジュアライズの専門の方との組み合わせが相性良いのです。補完しあう関係ですね)
 ただ、特に非ITのクライアントさんは中で何しているか分からない場合が多いので、結構大変な業務変更(情報の追加がや流れの変更)に対しても、良い設計をしているとさらっと対応しちゃうので、「実はすごいことをやっている」ということを分かってもらえないのが悩みです:-) *7

その他個人的な趣味とか

 坂井個人としては、この20年ほど 日本MySQLユーザ会(MyNA)の運営スタッフをやっています(現在は副代表)。また、MySQL 8.0(2017年にRC)で実装された「地球の曲面に対応した地理情報を扱える機能(Spatial機能)」に興味を持って調べてたら、地理情報、いわゆるGIS方面にハマって色々活動することになり、現在は OSGeo.JPの運営委員もやっています。趣味をこじらせて「測量士補」という資格も取りました(国家資格です)。MySQLな活動を中心に、 OSC(オープンソースカンファレンス)というイベントによく出没しています。
 その他の趣味も広く浅くで、少しやって満足しちゃうものも多いのですが、最近は、楽器(音が鳴る原理が好き;オーケストラでBassoon吹いていました)、見る将(たとえば藤井聡太先生のデビュー以来の棋譜は全て目を通しています)というあたりが語れる趣味といったところかな。あと、行く先々でGPSのログを取るのも最近趣味と言えるかもしれません。北海道がかなり完成してきました。パズル*8もかれこれ30年以上細く長く続けている趣味です。

よろしくお願いします

 という感じで、諸々自己紹介を申し上げました。
YAPC::Hakodateまで1ヶ月を切り、函館での前後の予定も含めて皆さんも気持ちが盛り上がりつつあるところだと思います。楽しみましょう!
私も少し早めに函館入りして、道南のGPSログ取得をプランしているところです。
そして運営の皆さん、いつもありがとうございます!



下の図は現在私が知っている「北海道」。

*1:場所がハマったというのは「広島なら小倉に近いから」という若干意味不明な理由

*2:近年これだけ多くのブログが書かれるイベントも珍しい気がします。SNSでちょろっと感想書いて終わりという事も多くなってきたので

*3:勿論、素晴らしいイベントを少しでも「支える側」に回りたい思いはいつでもあります。実際にそうなるにはプラス何かの目的やきっかけが必要となりますが、今回その「きっかけ」があったということで

*4:といいつつ自分でデザインする気はない(能力が不足)のでどこかにお願いすることになるのですが、今やどこにどう頼むと幾らくらいでどんなものができるのか、さっぱり分からぬ浦島さんに

*5:逆も言えます。つまり⊇かつ⊆

*6:勿論そのデータを発生させるための行動こそが企業活動です!

*7:あいつ大したことやってないし要らないよね、と言われるくらい難しいことを自然にこなしていきたいものです

*8:鉛筆で盤面を解いていく系の、いわゆるペンシルパズル

ODC2024参加 & OSC 20周年

オープンデベロッパーズカンファレンス(ODC)2024に参加してきました。
event.ospn.jp


ODCはOSC(オープンソースカンファレンス)の兄弟分のようなイベントで、年1回開催されています。
昼間はセミナー形式。



夜はちょっとした立食パーティの形式でした。


 OSCは今年で、初回開催から20周年。伝説の「4000円だか5000円だか払って食べ物が全然ない(あっという間に売り切れる)懇親会」から20年が経つわけです。若い人も比較的入ってきてくれているOSCですが、平均年齢はこの20年間で年々上がってきている感覚はあり、最近はあまり「すごい勢いで食べ物に群がる姿」は見られなくなった気がします。


 で。そのOSC、20周年を記念して本が出版されました。『OSCクロニクル』

 OSCを振り返った思い出話だけでなく、これだけ長く続けるためにどういったことを工夫してきたのか、気を使ってきたのか、ということを、OSCの黒幕(フィクサー)が書いてくれています。黒幕どころか全然隠れてなくてむしろ表に立って率先して旗を振ってくれているんですけどね。

 この本には、OSC参加者から寄稿された文を掲載するパートもあり、私もひと枠書かせていただきました。例によって「なるべくOSCと関係なさそうなことを書く」スタイルです(笑)。 OSCがなかったら出会うことがなかった、日本全国への思いを本書に奉納いたしました。
 寄稿した人もたくさん会場にて参加していたので、サイン大会になりました。


 

『日本MySQLユーザ会会2024年8月オフライン』を開催しました

日本MySQLユーザ会(MyNA)として、いつぶりだったか思い出せないくらいの超久々のオフライン会合を開催しました。
mysql.connpass.com

直接集まることのパワー

 コロナ禍でオンラインのイベントが盛んになり、セミナー形式を中心とした情報を伝える系のイベントはもうオンラインでいいじゃないか、という感じにもなってきました。しかし大きな問題にもみんな気づいています。双方向の交流ではなく、一方向の情報の伝達でしかない(または著しく一方向に偏っている)という点です。実際、オンラインイベントを開催しても、オンラインでスピーカーとして登壇しても、のれんに腕押しのような物足りなさを感じていました。物足りなさっていうか、これ、わざわざ時間決めてイベントやらなくても、自分の都合の良い時間に動画撮って公開すりゃいいだけじゃん、って。
 オンラインでの「交流」も然り。交流という名であっても基本的に同時にしゃべれるのは一人。少しでもオフラインの雰囲気に近づけようと、あっちでこんな話、こっちでこんな話ができる機能も少し模索されてたこともありましたが、使い勝手の良いサービスとして普及したとは言えない状況です。
 やはり、物理的な空間を共有し、直接会って話すことにはパワーがあります。スピーカーとしては聞き手の反応が見られて話題への相乗効果が生まれるし、交流の場としてもあちらこちらで会話が生まれ、自己紹介が始まり、悪事(?)の相談事をしている人がいるかもしれない、そんな雑多な空間が日々繋がり続ける「次」への推進剤になる面も非常に大きいと感じています。
 実は今回のイベントも直接顔を合わすパワーから生まれました。とにかく長いことユーザ会としてのオフラインの会を開催できていなかったので、そろそろやりたいという思いはずっとずっと持っていました(別途「つらい」の話を書くつもりですが、こういう「やりたい」「やらなきゃ」と思い続けること自体も生活の中で多少のストレスとなり続けるものです)。セミナーだけやるのか、交流メインにするのか。そんな事を考えて「やるなら交流」とベクトルを設定したものの、なかなか踏ん切りがつかない。人は来てくれるのかな、喜んでくれるかな、原点に帰って必要費用は参加者が適正に負担する形にしたいけど受け入れられるかな etc....
 開催を決断するきっかけになったのは、やはり「直接顔を合わす場」でした。古くからMySQLを触っている人たちで集まる機会が7月にあり、その場で何人かの方に意見を聞いてみたことや、実際のその場の雰囲気自体に「集まるってやっぱりいいなぁ」と心底感じたことなどに背中を押されて、今回の開催につながりました。実は8月上旬に開催さしたオンラインイベントもこの場で決まったのですが、顔を突き合わせることが生み出す力を感じざるを得ません。

会場はインプリムさん

 顔を合わせることが生む力という点では、今回の会場を提供してくださったインプリムさん(「プリザンター」の開発元)とのご縁も「顔を突き合わせる」ことから生まれたものでした。全国のOSCへの出展で何度も顔を合わせる中で知り合う機会を得て、今回のお願いにつながったものです。ビルの最上階フロアまるごとを、こういったイベントも開催できる専用スペース(兼エンタメスペース?)としていて、今回そのスペースをお借りしました。広い空間をゆったりと使わせていただき、非常に良い雰囲気の場となりました。どうもありがとうございました。

お酒を飲みながらゆったりと

 前半はセミナーの部。MySQLの最近のリリーススタイルについての基礎的なこと、最近のリリースのもう少し詳しい事、プリザンターのお話、の3本立てでした。はじめてこのスタイルで「MySQLユーザ会会」を開催したのがいつだったか調べたところ、おそらく2009年のこの回が最初だったように思います。
sakaik.hateblo.jp
sakaik.hateblo.jp

 当時は企業がOSSへの支援(食指?)を動き出したところで、企業主催のOSS系イベントが少しずつ出始めていた時期だったと記憶しています。それでもまだ「勉強会を酒を飲みながらやるなんてとんでもない」という空気がまだあった中、「だからこそ "ユーザ会" でしかできないようなイベントをやろう」と、イベントのスタートから飲食しながら開催するスタイルを試みたように記憶しています。今回、飲食費用の受益者負担という点も含めてまさに「会会」の原点回帰とも言えるスタイルで開催できたことに、一人ですこしじーんとしていました。

 当日まで受付のやり方すら決まっていなかった「ゆるゆる」な会でしたが、kabuさんが早めに来て引き受けてくださって、とても助かりました。手慣れたもので、細かい事を言わなくても全部バッチリやってくださって、心強かったです。ありがとうございました。

 後半にはピザを入れての交流タイム。LT大会を企画していたけどその前のご歓談タイムにもプロジェクタとマイクを勝手に使って話してる人がいて、良い雰囲気だなぁ~、これだよこれ、オフライン!!と嬉しく思っていたのですが、2009年もそんな感じだったみたいで、もう「交流会+その中での一部時間LT大会」だけ企画して、あとは好きにしてもらうような形でも良いのかもしれない。

プリザンターがMySQL対応!

 という大きな発表があったのですが、あまりに(私にとっても)大きな話なのでこれは別のエントリにて書きたいと思います。
10月8日にリリース予定のバージョンで、データベースとしてMySQLをつかえるようになるとのこと。やったぁ。
 講演してくださった峯さん、落ち着いた語り口で結構深い「MySQLの(プリザンター対応済の他のDBと比べての)違い」を紹介してくださり、会場からも「おお、確かに」「え、そこ違うの?」などの声が聞こえてきて盛り上がりました。このネタ、また違うところでも紹介してほしいですね。別途相談させてください!

 
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雨はバッチリ

 台風10号の接近、、というか、なかなか接近しないことで、実は数日前から胃の痛い思いをしていました。気象庁の予報円と3時間毎ににらめっこして、「月曜正午の予報円がこのラインよりも近かったら中止」まで決めていました。飲食物の注文タイミングの都合や、参加申込みしてくださった方への周知のデッドラインを睨んだ最終期限でした。台風の足が遅いことがわかり開催を決定しましたが、中野付近は開始時間も終了予定時間も7mmや9mmなどのひどい大雨の予報。これ(白状すると)自分が企画したイベントでなければ「帰りの交通機関が不安なので」と参加キャンセルしたかもしれないくらいです(笑)。 
 実際には断続的に押し寄せる雨雲のちょうど切れ目に、行きも帰りもハマってくれて、駅から会場への往復に傘を全然ささなくて良いという幸運に! 会の途中には、建物の中からも聞こえるくらいの大雨が降っていたので、本当にありがたかったですね。そして申込みされた方も、本当に交通機関の都合で参加できなくなった方や急なご都合で来られなくなったとしてキャンセルの連絡をいただいた方以外は、1人を除いて全員会場に来てくれました!! 当日ノーショウ(または極直前でのキャンセル)がもっと出ることを覚悟していたので、これは本当に嬉しかったです。みなさんありがとうございます。 キャンセルした方も全員がキャンセルコメントを残してくださり、ご事情がわかると同時に、コミュニケーションが成立している感覚を得られてとても嬉しかったです。主催者からコメント返す手段がないのでサイトでは反応できませんでしたが、全部拝見しております。ありがとうございました!次の機会(がいつ訪れるのかわかりませんけど)にはご参加いただけることを楽しみにしています。

まとめ

 ということで、色々企画・準備で「つらい」面はあったのですが、非常に良い雰囲気の場を見ているうちに全部疲れが吹っ飛びました(そしてその疲れは家についてお布団に入った途端に戻ってくるのですが(笑))。やはり同じものに関心を持つ人たちが場を共有するというのは素敵ですね。必ずしもユーザ会主導のものだけでなくとも、こういった「MySQL」に関心がある人たちが、それぞれで、それぞれの「場」を作っていってもらえたら界隈が盛り上がって面白いなと思いました。皆さんもぜひ。

発表資料

 冒頭で紹介した「MySQLのあらたしいリリースモデル」の発表資料です。LT資料は別エントリにて。
speakerdeck.com

LTでの発表に関するエントリ

sakaik.hateblo.jp

関連リンク

峯さんのプリザンターMySQL対応のお話のブログ

qiita.com

「プロジェクタとマイクを勝手に使って話してたyoku0825さんがその時やっていたこと」のブログ

yoku0825.blogspot.com

【歓迎】Pleasanter(プリザンター)がMySQL対応する!

先日の 『日本MySQLユーザ会会2024年8月』のオフラインイベントにて、OSSのノーコード・ローコード開発ツールであるPleasanterがMySQLにも対応するという大きな発表がありました。


私は「PleasanterとMySQL」という切り口では、恐らく外部の人間としては一番長く本テーマに触れてきた(?)と自認しているので、その視点から少しだけ語ろうと思います。

Pleasanterとの出会い

 今回のMySQLユーザ会の会場でお借りしたことで初めて Pleasanter という名前を目にした人も多かったことと思います。雑に紹介すると「社内の情報集約のためのサイトを簡単に作成できるローコードツール」だと思ってもらえば良いかと思います(違ってたらすいません)。
 私がPleasanterと出会ったのは、オープンソースカンファレンス(OSC)の会場でした。私自身も毎年、相当な数、相当な地域のOSCにユーザ会として参加(と言ってもすべて自腹だし代休みたいなものもないので、まるきり趣味ですが)していましたが、その中である時期から「いつもいるオレンジの3人組のブース」が気になっていました。私も自分のブースやセミナーや、久々に会えた人への挨拶回りなどで時間がいっぱいになってしまい、なかなかオレンジブースに挨拶に伺えることもなく、気になりだしてから何ヶ月も(半年以上?)経ってしまったのですが、ようやくご挨拶できたのが2023年の新潟でのOSC。他の地域と比べて開催規模が小さかったこともあって、今までお話したことのなかった出展者さんとお話することができたのでした。こういうことがあるから、私、結構小規模OSCも好きだったりします。浜松とか、もうやらないのかなぁ。。
 実は新潟OSCの前日に東京で PostgreSQL Conferenceに参加していまして、そちらでも Pleasanterのみなさん(しかしいつも見る3人組とは全然別の3人組)がブース出展されていたので、ご挨拶させてもらったほうが先なのでした。その勢いを受けての翌日のOSCでのご挨拶ということもあって、私の中で「Pleasanter」との気持ちの距離が一気に近くなった、2023年の11月でした。
pleasanter.org

MySQLに対応していない!

 当然OSSのWeb系ツールと言えば、私の関心事は「MySQLに対応しているか」。いや、ツールの部分が便利だったら正直、DBなんて何でもいいんですよ。でもMySQLに対応していたほうが気持ちも近づくし、他の人との会話の中でも話題にしやすいという面はあります。Pleasanterが対応しているDBMSは、SQL ServerPostgreSQL(だから PostgreSQLカンファレンスに出展されていたんですね)。
 なので、軽いご挨拶だったり馴れ合いだったりのノリで「MySQLに対応していないんですよね」「いつMySQLに対応するんですか」と言ったりしていました。なるべく明らかにふざけて言ってるな、対応していないことを批判してるわけじゃないよ、というのが伝わるように工夫していたつもりですが、変なプレッシャーになっていたらすいません。でもマジメな顔して話をする時には「使う人は、Pleasanterが動いている状態を便利だと思っているわけで、裏側の対応DBが増えたからって売上増えるわけじゃないですよ。MySQL対応するメリットは特にないですよね」みたいな事も言っていて(結構これは本心です)、まぁ「MySQLに対応してないPleasanter」というのは、一種の「イジリ」みたいなものでした。

MySQLユーザ会会開催

 そんな折、久々に日本MySQLユーザ会としてオフラインイベントを開催したいと検討を始めた際、インプリムさん(Pleasanterの開発会社)に相談したところ、素敵な会場の提供を快諾いただきました。「MySQLに対応していないPleasanter」なのに、です(笑)。まぁこちらとしては、このイベントをきっかけとして、MySQLに詳しい人たちともたくさん知りあっていただいて、MySQL対応のきっかけになったりしたらいいな、という思いは多少ありました。

PleasanterのMySQL対応を発表!

 そしてMySQLユーザ会会のイベント当日。白状すると、今回発表されたMySQL対応を、私は会の開始直前に知っていました(逆に言うと当日会場に来るまで知りませんでした)。スライドの投影テストをされている際に偶然目に入ってしまったんです。偶然のアクシデントなので知らなかったことにします(笑)。知っておいて良かったのは、進行役として紹介する際に「では、MySQLに対応していないPleasanterのお話をしてもらいます」と、敢えて強いイジリ表現で紹介できたことですかね。
 プレゼンでは、Pleasanterの機能や仕組みを紹介し、対応DBがSQL ServerPostgreSQLであることを紹介しています。まぁね、MySQLユーザ会の場なので、みんな「なるほどそういうツールねー」「おもしろいねー」くらいの感じで、でもとても行儀良く聞いてくれています。と、スライドが切り替わって


『2024年10月8日(火) プリザンターは、MySQLに対応します!』

WOW!!!!

製品話から技術話へ

 ここからのプレゼンがすごかった。PleasanterのDBアクセスの仕組みから、多DBMSへの対応方法、そしてMySQLへの対応時に引っかかったポイントなど、次々と紹介してくださり、場が盛り上がりました。「MySQL8.4以上に対応します!」「9.0もですかぁ~?」というツッコミは、個人的には結構好き。当意即妙ってやつです。まぁInnovation Releaseへの対応は必要ないと思うので「8.4以上のLTS版MySQLに」という説明で「当意即妙外し」ができそうですね。
 MySQL対応のためみ実際に手を動かして、悩んで、解決した人にしかできない詳細かつ自信に満ちたプレゼンで、とても良かったです! この技術パートを掘り下げてちょっと別のところでもお話していただきたい案がむくむくと出てきたので、また別途相談させてください。

そんなわけで

 今後は「MySQLにも対応しているPleasanter」と言い続ける責任が私に発生しているような気がします(そんな責任はないかもしれませんが、「対応しないの?」と言い続けたらそれが実現してもらえたという事に対する感謝のようなものです)。実際私自信の業務や直近の私の周りの中ではPleasanterが適合するところはないように見えるのですが、必要な時に必要としている人に「これをこうやって使ったらいいですよ」とお勧めできるように、もう少し中身のことなども知っておきたいな、と思いました。

 そんなわけで、貴重な開発リソースを使っての MySQL対応、ありがとうございます。リリース日を楽しみにしています!!!

イベント企画・開催つらい の話

正確に言うと、企画は楽しく、開催にこぎ着けるまでの過程がいろいろつらい、という感じですね。

2024年8月29日に開催した、日本MySQLユーザ会会オフライン にてLTで『MySQLユーザ会なにやってるの?とおさそいと』というタイトルでお話しました。
タイトルはこんな感じですが、結構いろいろつらいのよ、というのを聞いてもらう時間です(笑)。 お酒が入っている席での軽いLT(LLT)です。
speakerdeck.com


 内容については資料を見ていただくとして、思うところや要点をいくつかこのエントリでは書きたいと思います。

イベント運営って意外とたいへん

 企画者としては、もちろん、なるべく多くの人に喜んでもらえる場を作りたいという思いで企画をします。そしてこれは、プライベートの時間を費やして企画・準備をするので、なるべく手間をかけない(あるいは納得感のある範囲の手間とも言い換えられます)という点も、継続性の観点から非常に重要になります。
 で。
 その「手間をかけない」のところが、年々つらくなってくるわけですよ。 自分が使える時間が減ってきていることもありますし(最近は非常に時間を確保しにくくなっているので「6時間を予定している睡眠時間のうち幾らを作業に割り当てられるか」みたいな時期もあったりします)、世間の様々な状況変化もあって準備の手間が増えたということもあります。と言いつつも、イベント開催すると大概は「やってよかった」と思えるので、まぁそういうのが好きなんだろうなと諦めていますが(笑)。

セミナー系イベントでたいへんなの

 私自身が「オンラインでの登壇を面白いと思わない」ので、なかなか「オンラインイベントやるから喋ってよ」と他人にお願いしにくいという面もあります。そりゃそうでしょ。「俺、つまんないから話さないけど、あなた登壇してくれない?」とは、頼みにくい。
 とはいえ、全員がこういうわけではなく、オンラインでも登壇してみたい人とか、特にオンラインオフライン気にならないから話すよ、という人はいると思うんですよね。残念ながら私からはその人達の存在が見えていません。「登壇したい/してくれる人がどこにいるのかわからない」というのが正直な現状なのです。この状況で、セミナー系イベントを開催するのはたいへんだということは、想像に難くないでしょう。
 実は、イベントを継続していれば「発表の場があるんだ」「こんな感じなのか」などと認識して、「次は」「そのうちには」発表してみよう、という人が出てくることはわかっているのですが、その継続のための原資が、コロナ禍を挟んですっかり失われてしまったというのが、つらいところ。
 意外と公募してみたら話してくれる人は多いのでは?という期待も少ししているので、今までの「登壇者決定→イベント公開&参加者募集」の流れではなく「イベント公開=登壇者&参加者募集→期限までに登壇者が一定数集まらなければイベント中止」という形式を一度試みてみようかなと思ったり思わなかったり。オンラインイベントはリアル会場の制約がないため、こういったトライをしやすい傾向があると感じています。企画したら(特に発表者として)申し込んでくださいね!

オフラインイベントでたいへんなの

 コロナ前にはコミュニティイベントと言えばいわゆるリアル開催が当然だったのに、今や開催へのステップが一段高くなったように感じる。「新しい日常」とはこういうものかと実感しますね。行動様式としても、話を聞きたいだけの人はオンラインで十分、わざわざ会場に足を運ぶなんていう時間のムダはしたくない、というのは分からなくもないです(実際に私自身がそういう億劫さを感じています)。 というわけで、コロナ前と比べて都内でさえ、意外と人が集まりにくくなっている傾向があるというのが肌感覚です。
 セミナー形式で話を聞いて解散、というだけなら大部分はオンラインで済むし(ここで前述の「オンラインで話すのはおもしろくない」とのせめぎ合いになります)、ということは、わざわざ会場に足を運ぶメリットというのは「交流」に他ならない、そう考えています。交流メインとした企画をする場合、一定の人数が集まってくれなきゃ面白くならないし、色々細かい準備や判断が必要で(今回の台風でも開催可否随分迷いました)、意外と時間がとられたりするのが、最近つらくなってきたところ。イベントやりたいーという人や、手伝いたいーという人がいっぱいいてくれるといいな(夢物語)。


OSCなどへの出展、登壇などもたいへんなの

 スライドにあるように、各地のOSCに「日本MySQLユーザ会」として出展を続けています。コロナ期を除いて年間5~10くらいのOSCに出展していると思います。全国各地を訪問してMySQLを知ってもらい、そこでしか会えない人と交流し、その時色々教えてもらったり、あるいは随分立ってから色々教えてもらう関係になったりする。楽しく、そして結果としてどれも「メリット」のあった遠征でしたが、私としてもそろそろ「ひとまわりした感」というものがあるので、新しくOSC出展を面白がってくれる人たちが出てきてくれたらいいなぁと思っています。
 OSC開催日程は以下のサイトで続々公開されています。
https://www.ospn.jp/

こんな参加の方法があります。

ブース係

 ユーザ会で展示ブースをひとつ(長机ひとつ)を確保可能なので、そこに本や最新情報のチラシや説明スライドなどを展示したりします。毎回出展担当の人が自由に考えて良いです。MySQLに超詳しい必要はなくて、MySQLを面白いと思っていること、仲間を増やしたいと思っていること、MySQLの魅力を伝えたいと思っていることなどがあればOKです(むしろ、知らないことは出鱈目を説明せずによくわからないと正直に言う姿勢は (常識的に)必要です)。ブースで質問されて分からない時には、実は日本オラクルMySQLチームさんもOSCにはよく出展されているので、オラクルさんのブースに連れて行って一緒に説明聞いちゃうとあなたも知識が増えます(オラクルさん丸投げですいません(笑))。
 このようにOSCでのMySQLに関する活動を軸として、それ以外にも多くのOSSコミュニティが一堂に会しているという「場」の魅力もあります(「オフラインの魅力」の最たるものです)。他のブースにも話を聞きに行ったり挨拶したりして、知らなかった世界の情報に触れたり、普段困っていたことを解決したり、知り合いが増えたりなど、控えめに言っても「楽しい」ことはあるので、興味を持った方はぜひOSCのブース係に手をあげてほしいです。私が参加する回であれば色々手ほどき(?)できますし、そうでないときもアドバイス等はできると思います(まったく初めてでひとりでブース担当するは少し難しいかなーという気もしますが)。
 年内直近では10/12の長岡(新潟)、10/26の浅草(東京)、12/7の福岡への出展を予定しています。各地に行っておいしいものを食べるのも参加の楽しみのひとつなので、日本酒とおいしいお米が好きな人は長岡、いかがですか:-)

セミナー

 OSCではユーザ会で(多くの場合は)45分のセミナー枠を確保可能です。話したいMySQLネタがある人はお声がけいただけき、調整させてもらえればと思います。

なお、MySQLユーザ会は「コミュニティ枠」としてOSCに参加していますので、会社の宣伝(商品や採用)の話を含めることはできない点ご注意ください(本来は会社名を出すことも許されていなかったはずですが、その日のトークの背景説明として自分の立場や経歴を伝えるために名前を出すくらいならギリOKかなと思っています)。会社の宣伝をしたい場合はユーザ会枠ではなく、会社としてスポンサーとして枠確保する方法もあります(そんなに高くないので宣伝したいものがある会社さんはぜひご検討を)。

そんなわけで

 そんなわけで、まぁイベントを企画して開催するのは楽しいことではあるのですが、正直なところリソース不足もあって「大変なの!!!」。イベントあるといいな、と思う人、イベント等のセミナーで話をしたい人は、ぜひ企画したり発表したいアピールをしていただければと思います。こういった活動をあまりやったことがない人は、自分に何ができるか、どこまでできるか不安もあると思います。そんな場合はまずはMySQLユーザ会のイベントや、OSCなどでユーザ会が出展している時に来てください。そういったコミュニケーションが活動の第一歩になるものです。


 なんか簡単にスライド補足説明程度のことを書くだけにしようと思っていたのに、熱くなっちゃったな。我々は活動の主体が別に「ユーザ会」である必要はまったくないと思っていて、私たちの目指すところは「MySQLの情報に多くの人が、多くの切り口や視点で、簡単に触れることができること」ですので、賛同される方はそれぞれできることをやって一緒にMySQL界隈を盛り上げていければ、と願っています。

FOSS4G Tokai 2024参加

2024年8月23,.24日の2日間に亘って開催された FOSS4G Tokai 2024 に参加してきました。
foss4gtokai.my.canva.site



要約

 名古屋に行って味噌煮込みうどんを食べてハンズオンのお手伝いっぽいことをしてみんなでごはんを食べに行って意外と早く散会してしまったので夜ひとりでラーメンを食べに行って翌朝ホテルを出ようと思ったらピンポイントで名古屋駅付近だけ大雨が降ってなかなか出られず止んでから新幹線口のほうから歩いて会場に向かったら線路に阻まれて大きな歩道橋を上る羽目になって会場で準備のお手伝いしたり話聞いたりしているうちにあっという間に夜になって懇親会が盛り上がってつまりいっぱいお話聞けていっぱいお話できてたのしかったです!

ハンズオンデイ

 2日間開催の1日目はハンズオンデイ。地理データのビジュアライズの部分は全然わからないので MapLibreの講習で勉強させてもらおうと以前より思っていたのですが、参加受付の締切が火曜日の14時と、思っていたより随分早くて、水曜夜に気づいた時には時遅し。でも気分は「朝出てお昼頃名古屋に着く」つもりになっていたので、なんとなく早めの時間にハンズオン会場へ。 スタッフのご厚意でひと席を融通してもらえそうな雰囲気でもあったのですが、そういうのもナニだしということで、もうひとつの講習である "PostGIS" のサポートとしてお手伝いさせてもらうことになりました。こちらのハンズオンは基本的に(コピペではなく)手打ちで進めるスタイルだったので、それなりに時間がかかる人、打ち間違いなどで出たエラーをなかなか解消できない人、色々いらっしゃって、少しは問題解決のお手伝いはできたかなと思っています(オヤクソクではあるけどコンマとドットの打ち間違いは、「このあたりがおかしいはず」と分かっていても、なかなか見つけられないもので、今回それを見つけたのは個人的に優勝)。ハンズオンは、しっかりと POINT/LINESTRING/POLYGONのデータを登録してもらい演算するところまでをひととおり「ちゃんと自分の手で」体験できるという、素敵なものでした。また講師をやっていただきたいですね。
 夜はおもにスタッフの皆さんたちと近場のお店でお食事。

セッションデイ

 2日目は、朝ホテルを出ようとしたタイミングで名駅を中心とした狭い範囲に大雨。朝食を食べながら様子見するも止む気配がなく、珍しく私が朝食でコーヒー飲みながらゆったり外を眺めたりしていました(普段は、熱いコーヒーは時間が勿体ないのでホテルでは飲まない)。「スタッフは9時集合」ということでしたが「ベストエフォートで」という接尾辞(?)がついていたのと、よく考えたら私、スタッフじゃないので(笑)、少し遅れて会場到着。
 ちょうど机のセッティング中だったのでお手伝い。イイカンジに前後間隔、配置がキマり良い気分。投影に使用する機材でのHDMI相性が悪くてアレコレ苦労しましたが、関係者が持参の変換アダプタでD-subにすることでなんとか解決。GJ。
 セッションは、PLATEAUあり、点群あり、災害対応(行政)あり、データベース(DBMS)あり、手書き地図あり、CityGML(ガンダム)ありと盛りだくさんでした。以前より興味を持ちながらも、なかなか触れる機会のなかった情報にたくさん触れることができたのが良かったです。

「旧GIS爆誕

 どれも素晴らしいセッションだったのですが、中でも異色だったのが「"旧GIS"で地図を描く」のお話をしてくださったりーべさん。地理/地図界隈の人は必ず知っている "QGIS"というソフト名に掛けた講演タイトルで、もうこのタイトルだけで何日も前から「一番楽しみにしていたセッション」でした。講演後「こんなにたくさんの人の前で話すのは初めて」と仰っていましたが、面白さと大変さを伝える名手だなと感じました。架空地図を作る喜びとコダワリがとても伝わってきました。参加者からの専門的な見地からの質問も面白かったですね。道路のRは考えて書いているのか?盛土切土はどう? 私からは「三角点(基準点)は地図の中に描かれているのか」等等。基本的には、実在する地図をたくさんたくさん見てきた中で「あり得るカーブ率」「ありえる等高線」の形が身についているので、自然にそれを作成される架空地図の中で描いているとのことでした。当日話題には出なかったけど、そういえば用途地域(都市計画法)も決めていたりするんですかね(笑)。(合併前の県全体の設定もあるようなので、そこまで設定されている気もしてきた)
 冷静になってみれば「何の役にも立たないお話(と本人にも言ったw)」なのに、休憩時間にも りーべさんの周りに集まってわいわいと興奮しているのを見て、この場は本当に地図とかが好きな人の集まりで、そういう人の心を揺さぶるクリエイティブな活動をされているのだなと認識しました。「基準点設置してくれたら、妄想 "点の記" を書くよ」という人がいたり(私だ)、「それなら測量した記録があるはずだから測量簿(というのですか?)を作るよ」という人がいたり、盛り上がりました。
 

会場の景色が抜群

 会場となった愛知大学名古屋キャンパス最上階。眺めが最高でした。行き交う列車(新幹線を含む)がミニチュアみたいで、仲間と他愛もない雑談をしながら半日くらいはここで外を見ながら過ごせそうなくらい、楽しい景色でした。

懇親会

 懇親会は少し駅のほうに向かったところにあるお店「伊藤様会場」にて開催。いや、そうじゃなくて(笑)、一部屋貸切で使えるお店を幹事さんが予約してくださいました。LTも開催できたし素晴らしい環境でしたね。LTは私も「どうでも良いネタ」を披露したかったのですが(他では通じなくても、今回参加のみんなにはきっと面白がってもらえる)あまりの自分の時間のなさに今回は痛恨の断念(←悔しさをできるだけ表現してみました)。
 
 普段ならとりあえずSNSやブログに載せるために、飲んでる雰囲気の出る写真を撮る私ですが、着席するなり話が盛り上がって、ここに載せられるような写真がほとんど残っていませんでした。私は当日中に新幹線で帰る予定があったので一次会で失礼しましたが、もう一軒行った人も多かったようで、もっともっと語りたかったですね。次の機会(FOSS4G Japan かな。その前に FOSS4G 山陰があるか)にてリベンジしたいところです。

まとめ

 こんな感じで、朝に家を出て翌日の深夜には家に戻っているという、私としては珍しい弾丸スケジュールでの参加でした。2日間とは思えないほど充実した時間でした。企画・準備をしてくれたスタッフの皆さん、押しかけスタッフみたいな私を受け入れてくれたスタッフの皆さん、講演者の皆さん、会場や懇親会でお話してくださった皆さん、どうもありがとうございました。私のメインSNSFacebookなのですが、最近あまり「おともだち」を増やしていなかったところ、今回たくさん繋がっていただけました。今後ともよろしくお願いします。

 また、山﨑さんのMySQL講演時に出た質問に、私のほうでも検証してまとめておいたので、ご興味のある方は参照ください。
sakaik.hateblo.jp

MySQLのGIS関数は180度を跨いだ部分でもちゃんと最短距離を計算する

 2024年8月の FOSS4G TokaiMySQLの山﨑さんの発表後に「MySQLでは180度線を跨ぐ場合の距離など、正しく計算してくれるのか」という質問がありました。確か以前、(当然)それは大丈夫だったのを確認したよなぁと朧気に思いつつもその場でフォローはできなかったので、ご講演終了後に速攻で確認してみました。

結論

 「ちゃんと、180度をまたいでも、最短の距離で計算してくれる(ぐるりと0度のほうを回って、つまり例えば 東経175度から0度を経由して西経175度までの距離を計算するわけではない)」

実例

 赤道上での、東経165度から175度の距離、および東経175度から西経175度までの距離を求める。どちらも経度10度ぶんの距離(1000kmちょっと)になるはずである。

mysql> SELECT ST_Distance(
    ->     ST_GeomFromText('POINT(0 165)',4326)
    ->    ,ST_GeomFromText('POINT(0 175)',4326)
    ->    ) d;
+-------------------+
| d                 |
+-------------------+
| 1113194.907932733 |
+-------------------+
mysql> SELECT ST_Distance(
    ->     ST_GeomFromText('POINT(0 175)',4326)
    ->    ,ST_GeomFromText('POINT(0 -175)',4326)
    ->    ) d;
+-------------------+
| d                 |
+-------------------+
| 1113194.907932774 |
+-------------------+

期待通り「ほぼ一致」した。

少しの誤差が気になる

 どちらも赤道上での10度ぶんという、回転楕円体上では同じ距離となるはずなのに、やや異なる数値となったのが気になる。その差は、0.000000041メートル。つまり0.000041ミリ。1000kmぶんの距離を測って、0.000041ミリ。実務上は無視しても良い程度ですが、本来一致するはずなのに差が出るのが気になりますね。

ラジアンに変換する際の誤差ではないか

 MySQLでは(というか Boost::Geometryライブラリでは)、内部でラジアンで計算しているものと思われます。
ということで、「同じ経度10度でも、180度線をまたぐ場合の計算で差が発生するのではないか」を仮説と立てて、確認してみたいと思います。

まず値の準備。Piの値を設定し、経度 165, 175, -175 の3つをラジアン変換します。

irb(main):001:0> pi=3.1415926535897932384626433
irb(main):002:0> rad165=165*(pi/180)
irb(main):003:0> rad175=175*(pi/180)
irb(main):004:0> rad_175=-175*(pi/180))

irb(main):014:0> rad165
=> 2.8797932657906435
irb(main):015:0> rad175
=> 3.0543261909900767
irb(main):016:0> rad_175
=> -3.0543261909900767


ラジアンうしの引き算として、東経177度と179度の差と、東経179度と西経179度の差(どちらも度で表すと2度の差)を求めます。
165度と175度は単純に引き算すれば良く、175度と-175度は、これらの差(非常に大きい)を一周の角である2*piから減ずれば良いです。

irb(main):009:0> (rad175-rad165).abs
=> 0.1745329251994332
irb(main):010:0> (2*pi-(rad175-rad_175)).abs
=> 0.17453292519943275

0.00000000000000045ラジアン程度の差が発生しました。

これは弧の長さにすると、半径rを用いて rθで求められるので、

>||irb(main):011:0> r=6378137
irb(main):009:0> (rad175-rad165).abs
=> 0.1745329251994332
irb(main):010:0> (2*pi-(rad175-rad_175)).abs
=> 0.17453292519943275
|

0.0000000028メートルほどの差が発生しました。これ、piの値を結構詳細に指定したので先ほどよりも小さい値となりましたが、試しに pi=3.141592653 で同様の計算をしたところ、差は0.0000000062メートルとなりました。

180度線を跨ぐ計算で発生する差は、これかなー。
確証はないので、みなさんの続報に期待したいと思います。

山﨑さんの発表資料

 質問を受けて、発表者山﨑さんのほうでもお手元で実際の動作の確認を行い、発表資料に追記した上で当日中に資料を公開されています。すばらしい機動力!
 私と山﨑さんそれぞれ独自に検証していたのですが、何処の緯度でも良いのにゼロ度を使った点や別の測地系でもいいのにWGS84をとりあえず使った点など、発想が類似していて嬉しかったです。違いは、私は10度という大づかみな距離を確認したのに対して、山﨑さんは精密に2度の距離を測ることにしたくらいですね。



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