「甘え」の構造

「甘え」の構造 [増補普及版]

「甘え」の構造 [増補普及版]


 コフートからの連想で知人に紹介してもらって読んだ本。 普段読み慣れている分野や展開や語り口と随分異なっているせいか、読み進むのに苦労した。難解との印象を知人に伝えたら驚かれたので、まだまだ私にはニホンゴの読解力が足りないのだなと悟った。


 さてこの本。昭和46年に最初の版が書かれて以来ずっと読み継がれてきた本で、「甘え」という日本固有の文化感覚を中心にすえた観点から精神分析理論を検討しなおしたものだと言って良いだろう。この「甘え」は「甘やかし」や「甘ったれ」とは異なるもので、私自身はいわゆる「阿吽の呼吸」というものこそ、著者の言う甘えの体現ではないかと理解した。相互の気遣いを怠らぬ風習と、その気遣いを無意識に期待する感情。これこそが著者の言う「甘え」の本質であるという理解だ。


 また本書で著者は「すべてを "甘え" という現象にひっくるめて、何もかも説明可能になるのだとイイ気になるわけではない」とし、「甘え」という観点が飽くまでもひとつの分析のとっかかりとなるものにすぎないことを断っている。この点にも好印象を受けた。


 ともあれ、冒頭で述べたとおり、私にとって本書は著者の意図をくみ取るのが「難しい」と感じた本。されど何か今回読み取れなかった本質的なものを含んでいそうな予感は感じることができたので、この本は手元に置いておいて、また時期がきた時に再度読んでみたいと思った。


.