先読み力で人を動かす

「先読み力」で人を動かす ~リーダーのためのプロアクティブ・マネジメント~

「先読み力」で人を動かす ~リーダーのためのプロアクティブ・マネジメント~

 プロアクティブとリアクティブ。これがこの本のキーワードです。題名の通りまさに「先読み力」です。トラブルを予期してトラブルが起きないように手を打つ人とトラブルが発生してから対応する人。私の周りにもこの両方のタイプがいます。「仕事ができない人」に分類されるグループはともかくとして、「仕事ができる」グループに含まれる人の中にもこの両タイプがいるのです。
 仕事ができるのにリアクティブ(トラブルが起きてから対応する)な人に共通して感じるのは、非常に頭の回転が速く、器用で賢いという点です。そういう人たちは事前にまだるっこしいことをあれこれ考えるために時間を割かずにどんどん実行します。非常にビジネスとしても、速い。そして(事前にリスク要因を検討していないだけに)トラブルも多いのだけれども、持ち前の脳力と器用さでどんどん解決していくのです。私はそういう器用さを持ち合わせていないため、自らの恐怖心を埋めるために周到な(当社比)準備を必要とするので、そういったテキパキと物事を解決していける人たちを尊敬している部分は、あります。


 一方でそういったタイプの人たちと一緒に仕事をしていて感じるのが、長期的な信用という点についてです。 ひとつひとつの問題についてはテキパキと解決していくかもしれませんが、一回問題(障害やトラブルなど)を起こしたという事実は積み重なっていきます。迅速に対応する姿勢は評価されるかもしれないけれども、そもそもトラブルが起きないほうが良いに決まっています。絶対的な尺度を自分の中に持たない人にとって実際にはトラブルの多少を判断することはできないので、トラブルが少ないことを理解してもらう演出も必要になるときがありますが、長期的な「評判」に関わってくることは論を待たないでしょう。


 白状すると、この本にかかれているような内容(やっている人にとっては当たり前すぎること)を、リアクティブ型の人に教えるのは非常に怖い面もあります(笑)。持ち前の頭の回転に加えてプロアクティブに予測して備えるスキルを得るのですから、怖いものなしになりますよね。実際に取引先で一緒にお仕事をさせていただいていた、明らかにリアクティブ型の方に以前本書に書かれているような内容のことを助言させていただいたら、本人はもちろんそのおかげで彼のチームメンバーみんなも一層生き生きとした仕事をできるようになったように感じたことがあります。
 彼にも(私の散漫な情報ではなくまとまった情報として)本書を一度読んでもらいたいし、その他の、仕事がいつも後手後手にまわって苦労している人たちにもぜひ一読してもらいたいなぁと思う一冊でした。


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