- 作者: 畑村洋太郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2005/04/15
- メディア: 文庫
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数年前より「失敗学会」というものの存在は耳にしていて、果たしてそれはジョークなのか本気なのかも分からないまま時を経たのですが、今回ふと「読んでみたい」という気分になって手にしたのがこの本。文庫本になって500円ほどの価格だったということも後押しして。
まず「失敗学」というのがジョークでもなんでもなく、「失敗を次の成功に結びつけるため」にしっかりと失敗と相対峙して本質的な失敗の原因や対策などを検討しようという、強い目的意識を持った学問であることがわかりました。 こういった一見ジョークにさえなりそうなものを本気でトコトン極めていく中から何かが生まれる、そんな突き詰め方は私も大好きです。
本書では、失敗原因の分類を行っています。いわく、無知、不注意、手順の不遵守、誤判断・・・から未知まで10種類。必ずしもこれが唯一の分類ではないでしょうが、まず「失敗か成功か」の2択しか判断がない場において、失敗をこのように分類するという姿勢そのものがすでに有効であると言えるでしょう。
また、後半では技術の成熟に伴う失敗の起こり方についても述べられています。萌芽期に試行錯誤で「良いやり方」を見つけ出し、その「もっとも良さげな方法」が太く成長していく発展期、成熟期。このフェーズでは効率化の名のもとに、これまで行われていた試行錯誤、つまり枝葉の部分が削られていき、最大効率を上げるための幹だけが残されることになります。この過程で枝葉を落として更なる効率化をしようと試みた際、うっかり幹を傷つけてしまい(あるいは切ってはならないところを切ってしまい)事故となるという成長過程だと私は理解しました(本書の主張と微妙に異なるかもしれませんが、今ここで書いた成長過程というのが私にとって非常に心当たりも多くあり、納得感がありました)。
その他様々な事例や考え方などが紹介されている 300ページのこの本は、「成功か失敗の2択」しか持っていなかった人にとっては必読とも言えるでしょう。 この本は読者を選ぶ本であるようにも思います。本書を必要とするタイミングというのがきっとあると思います。でもまずはタイミングに満たない方でも、こんな本があったなと後で思い出せるよう、今、読んでみても損はないのではないでしょうか。
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