コメディタッチで、ついつい一気に最後まで読んでしまいたくなりました。そんなに簡単に人の評価はかわらねーよ、とか、この設定の人物はこんなことできねーだろ、など大きな流れに疑問を感じるシナリオではありますが、そんなところは気にしないで、各場面を楽しむようにすると存分に味わえる本だと思いました。
「人は誰もが自分よりもダメなやつが居ることを知って安心する」という心理を会社運営に利用した社長が、「ひとりいじめられっ子」として特別待遇で雇用したのが、主人公である羽毛口信夫。月給20万円、役員報酬3000万円、という荒唐無稽な状況設定で話は始まります。
場面の転換がおもしろい本なのでネタバレになるようなことはここでは避けますが、ともかくみんなの捌け口になることで会社の空気が良くなっていくという、冷静に考えると心傷むシチュエーションでした。 「あいつより俺のほうができるさ」といがみ合っていたもの同士が、「羽毛口は俺より下だ」という事実を認めて安心することで、お互いにくだらない意地の張り合いのない仕事ができるという仕掛けです。
その後の羽毛口の活躍(?)。とにかく失敗してみんなの嘲笑の的になることが任務であるのだから、各シーンごとに成功は失敗、失敗が成功というジレンマをかかえつつの展開となります。いったい何が起こるのか、読む方はお楽しみあれ。
不覚にも何カ所か、じーんと目頭が熱くなった。
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