- 作者: 井寄奈美
- 出版社/メーカー: 日本実業出版社
- 発売日: 2009/12/19
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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新年一冊目の読書感想文は、なんとも挑発的なタイトルの本。
「なにわの社労士」井寄奈美さんの新しい本です。
とかく(雇われではない)まっとうな経営者というのは、我慢して我慢して我慢して、なんとか雇用を守ろうとするものです。社員に辞めてもらうのは悪だ、という考えが根底にあるからでしょう。それでも経営状態が悪い時、全員の給料を払いきれないような状態(これを著者は「10人乗りの船に6人分のパンしかない状態」とたとえています)では、適切な人数規模にすることを選択しなければならないこともあるはずです。 無理して頑張っちゃってニッチモサッチもいかずに苦しんでいる経営者さんを多く目にして、そういう人たちに伝えたかった、とこの本を書くことを決めたのだと以前聞いたことがあるような気がします。
これはまさにそんな本です。
前書きの「この本は(略)、社員には手漕ぎのボートを与えて、自分は豪華客船に乗って悠々としているような経営者はこの本の対象とはなりません」と強い調子で書かれていることからも、その意気込みがわかります。
私の会社は残念ながら(といっていいのかどうか)、お辞めいただくような社員はいないので、今の自分のためというよりは、将来の自分、または関与した会社さんの中に於いて役立つかもしれないという視点での読み方になります。
実例の断片を含めつつ、非常に詳しく、丁寧に、系統立ててまとめてあり、これはすごい本だなと感じました。概念的な部分で言えば結局は、「判断し」「礼を尽くし」「資料・証拠はきちんと残し」「冷静に」対応するという、私でも書けそうなものが骨になっていますが、そのそれぞれについて法律に関する説明、書類フォーマット例、やってはいけないこと、気をつけるべきことなどが詳細に説明されていて、・・・・なんというか読んでいるだけでも気が重くなりました(笑)。 だからこそ、この本の内容のお世話にならないで済む状態をめざさなければ、と身が引き締まるわけですね。
とは言え、万が一状況がこの本を必要としたとき、この本はすごく強力な味方になってくれると強く感じました。「使わない引き出し」というのはビジネスをする上で必要で、この本によって読者の引き出しの中に「必要となったら取り出さねばならないなにか」がある安心感をも得られるのではないでしょうか。
たいていこの手の本は途中で中だるみ的に読み飛ばしたり、惰性で最後まで読むような状況になりがちですが、この本は最初から最後まで本気モードでびっしり(でも疲れない)。この本のターゲットになる人は多くはないと思いますが、もし自分はこういう情報も引き出しに持っておいたほうが良いかもしれないと思う経営者さんがいれば、ぜひこの本を読むことを勧めたいと思います。
書影がなんか真っ黒っぽいですけど実物は光沢のある濃い青で、赤いオビとともに落ち着いた印象です。 そうそう、オビにある「解雇の作法」。この本に書いてあることをヒトコトで言い表すとまさにコレ!ですね。 「辞めてもらう社員に礼を尽くすことがすべてのベースになる」という事も、このキャッチコピーから伝わってきます。
追記:2010/01/19
発売1ヶ月も経っていませんが、早速増刷が決まったそうです。最初は経営者向けの本だから売れ行きも限定的かななどと(失礼ながら)思っていたのですがそれ以外の層にも適切にリーチしているようですね。 おめでとうございます。
○著者の井寄さんのブログでの増刷決定報告:
http://blog.livedoor.jp/iyori_nami/archives/51449108.html
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