- 作者: 松瀬学
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2008/06
- メディア: 単行本
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小学校のころ、そもそもオリンピックがどんなポジションのイベントなのか、大きいらしいことはわかっても今ほどには判っていなかったころ、モスクワ五輪を迎えました。なんだかオリンピックをモスクワでやるのだと世間がはしゃいでいて、でも途端に「ボイコット」ということで日本選手は誰もモスクワ五輪に参加しないということになったらしくて、それでも子ぐまのミーシャは可愛くて、いったいこれは何なんだろうなと子供心ながらに違和感を感じていました。
今、松瀬氏のこの本を知って、改めてあれは何だったのか知りたくなり読み始めました。
五輪に出るはずだった選手たち、山下。長崎。瀬古。高田。そしてIOCやJOC,体育協会のスタッフたち、行政側の役人、メディア業、広告業、様々な立場の人にインタビューをし、語ってもらっています。
政治とスポーツ。モスクワボイコットの時には「政府が圧力をかけて無理矢理やめさせた」という印象が強く、この文脈では政府は悪者という意味を含んでいるのであるが、オリンピック憲章により政府がボイコットを決めるわけには行かないという中、政府側の担当者の苦悩も綴られているあたり、たんなる糾弾本ではなく「あれは何だったのか」を知りたい、伝えたいという著者の強い思いが伝わってきました。
この本では17人の人にインタビューをおこなっています。そして必ず「あの五輪を漢字一文字で表すと?」と尋ねています。 各位が挙げた漢字は、、、
苦 無 残 始 過 踊 労 忍 無 変 曇 圧 怒 失 共 商 継
非常に辛い文字が並んでいます。
そして私がこの本を読み、彼らのたいせつな思いに際して選んだ一文字は
【重】です。
とっても、重かった。。この本。
国のお金をどれだけ使ってスポーツをやるつもりのか、という問題は依然としてありますが、それとは別の話として1980年のあの事件について、それとは切り離して純粋な思いで接することができました。
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★2008/10/26 追記
toroneiさんからコメントいただきました。
http://d.hatena.ne.jp/toronei/20081020/E
お金がかかるから回避したかったというのではなく、この本のスタンスは米国大統領選の人気稼ぎのために強硬なポーズを取ってみたアメリカと、それに追従する以外の選択肢がなかった当時の日本、という構図で一貫しています。あまりこの部分に対して深く触れられているわけではなく、むしろ、選手、役員、スタッフなどの五輪出場に関係するひとりひとりに話を聞いていき、当時の心境や起こったことを綴っているものです。 それぞれの立場での葛藤や苦悩など、心に重く響いてきました。特に柔道の山下のエピソードは言葉に重みがありましたねぇ。。
お金についてはJOCは国から何十億円ものお金を援助してもらっているので、国が「こまるなー」って言ったら意向を汲んで従わざるを得ない。だからより経済的にも自立する必要があるのだと,モスクワ後に努力した人の話もあります。一時経済的独立したけど今はまた援助に頼る体質に逆戻りしてしまいましたけどね、、、その部分に対する批判は本書の趣旨ではないと思います。
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