FOSS4G KYUSHU 2025 参加

2025年8月8日~9日の2日間に、福岡市で開催された FOSS4G KYUSHU 2025 に参加してきました。
これは普段は名古屋の周辺でFOSS4Gイベントを開催している FOSS4G TOKAI 運営メンバによる「九州初上陸」のFOSS4Gイベントです。
foss4gtokai.my.canva.site

往路復路

 千葉県に住む私。普通に考えれば羽田空港から福岡空港に飛ぶのですが、今回は往復ともに新幹線にしました。行きは少々仕事をしながら、帰りは疲れてなんだかぼーっとしたまま、休息したりSNSをダラダラやったりしながらの乗車でした。帰りは九州北部や三島付近の2箇所の線状降水帯の影響で新幹線がなかなか大変な状況でしたが、大きな影響もなく30分程度の遅延で帰れたのはラッキーでした。このあたりの話や、行き帰りにちょっと寄り道した場所(三角点やゼンリンミュージアムなど)は別途noteのほうにでも書く予定です。
 なお、往復新幹線にしたのは、最近は飛行機が面倒くさい(特にモバイルバッテリーまわり)こともあるのですが、今回については搭乗券を買うのが遅れたこともあって、飛行機よりも新幹線Gのほうが安い(あるいは同等)だったという事情もあります。

会場

 イベント会場は天神にある「エンジニアカフェ」。イベントの公式サイトの何処を見ても、会場の名前しか書いておらず、このエンジニアカフェがどこにあるのか全然わからないんだ。参加申込みのPeatixには地図がありますが、受け付け終了後にはPeatixへのリンクもなくなってしまうので、この辺は次回へ向けての改善点かもしれない。
 赤煉瓦文化館という100年以上前に立てられたレンガ造りの建物で、もともとは日本生命九州支店だったとのことです。街ナカに突然現れるレンガ造りの重厚な建物、そしてその中でイベントが開催されるのが不思議な気分です。

ハンズオンデイ

 1日目は午後に2枠のハンズオンが予定されていました。私は2枠目、夕方からの「衛星データ解析の一歩目を踏み出してみよう」に参加しました。講師はぴっかりんさん。衛星データの検索の方法、ファイルがラスタ形式(tif: 今回のはGeoTIFF?)であること、QGISに表示して目視解析する方法などを教えてもらいました。特に false color のデータはバンド?レイヤ?用語は理解していませんが、波長などごとに強度などの値が入っているものなので、それらの関心バンドだけを表示対象にして色を割り当てることで、強調表示することができるという手順など、面白かったです。これって要するにピクセルごとに値を複数持っているという観点からは、RDBMSのテーブルと同じようなデータ構造なので、数値的に何か操作(発見)したい場合はもしかしたらSQL親和性が高いのかもしれないなと感じました。
 ある程度の分解能のデータは無料で使用できますが、より高い分解能(車を見分けられるレベルとか)のデータは有料で提供されるとのこと。講習後の雑談の中で「データ提供者と提携して、"数十万円のデータを使用できるハンズオン" を企画したら面白いのでは?」という話をしたら「解析に使おうとすると(枚数などの事も含めて)もう少しお値段かかるんですよ」(要するに百万から上の話らしい)とのことで、うーん、うーん、うーん。趣味でちょっと見てみようというレベルではないのですな。 そういう費用感覚も講師から訊かせてもらえたというのは、大きな体験でした。 趣味で活用するなら局所的なエリアに対する解析ではなく、気象データのように全国レベルでラスタ化された公開データを使う、というのが趣味で触る側の落とし所なのかな、とも思いました。
 講習の中での話題として、JAXAが公開している「人工衛星がいまどこにいるか」が分かるサイトを紹介してくれました。多くの衛星が(宇宙空間とは言え)地球表面に這うように回っているのに対して、静止衛星は(静止軌道なので当然)非常に遠いところを回っているのが視覚化されて興味深かったです(地球の半径の約6倍離れたところを回っている)。なお月はこのさらに10倍くらい離れたところ。逆に言えば月までの距離の10分の1までも行ったところで回っている(静止して見える)というのがすごいですね。このへんの話、好物です。
www.satnavi.jaxa.jp

ハンズオンデイ夜

 何人かで天神で夜ごはんを食べました。「ふとっぱら」というお店でした。おいしかった! 次の予約のお客さんがいるということで時間制限のある中でしたが、すごい勢いで注文して、すごい勢いで各種食べて、すごい勢いでおしゃべりして、濃厚な時間でした。健全な時間(?)に宿に戻り、結果として制限は良かった気もします。

セッションデイ

 大雨の予報の中、朝の集合時間にはそれほど降られることもなく会場に到着。セッションデイは7本のセッションと10本のライトニングトーク(LT)が催されました。各セッションの内容はきっと誰かがブログに書いてくれるでしょうから、ここでは全てのセッションについては語りませんが、多くのセッションがよく準備され、丁寧に説明をしていただいたのが印象的でした。FOSS4G Tokaiが他の地域FOSS4Gや全国大会(いわゆるFOSS4G Japan)などと異なるのは、実は登壇の公募を行っていないところにあります。運営者が「この人のこの話を聞きたい」という人たちに声をかけて、いわゆる「プログラムを作る」作業をしてくれています。他と比べても各枠の時間をゆったりと確保しているので、講演後の質疑もたっぷりと行われて、内容に関する理解が一層進むのが良いなと思いました。
 個人的に面白かったのは、山﨑さんのMySQLと河内さんのオープンナガサキ。山﨑さんのMySQL話はFOSS4GJでは毎度のように講演されているのですが、今回は「新作」で、単なる機能の紹介に留まらずに、MySQLの持つ地理情報関数を使った応用的使用例を紹介していたのが良かったです。河内さんの話はもっとも「現場」を感じられるのが良かったです。私は今のところ趣味で地理情報に関わっていることもあって、机上、紙上の理解に留まっていることがほとんどなのです。なのでこういった現場の話にはワクワクするのです。懇親会でもたくさんのお話を聞かせていただいて、自分の仕事としてもこういった話に関われるようになったらいいなぁと思いました(なお私、主に"データ"が存在するところでの「課題解決」がお仕事ですので、お悩みの課題などがあればお気軽にどうぞ。壁打ち相手になりますよ)。あとゼンリンさんの運営するマップデザインギャラリー統括の小野さんのお話も、また別の意味での「現場」感が魅力でした。地図とテーマにした商品の開発や、販売に乗せていくまでのストーリー。昨年小倉のゼンリンミュージアムに寄った際に購入した数々の品(ついたくさん買ってしまったのですw)の中で特にトートバッグが気に入って、この日も使用していました。「地図はオシャレ」「地図はかわいい」といった視点ももっと拡がっていくと良いですね。 地図は厳密性が求められる一方で、もっともっと自由だと思うんですよ。

ライトニングトーク

 ライトニングトークでも沢山のお話をきかせてもらえました。メインセッションとは異なり、5分間という時間をもらってその枠内で語ることができる、というトークコーナーです。タイマーが動作し、5分経つと強制終了。話の途中でも絶対終了。 最近「少し過ぎても最後までお話してもらいましょう」というヌルいLTが増えてきた中で(私が主催するイベントでもそうやることが増えました)、厳しい系のLTは久々でした。トークしている方がのんびり自己紹介なんかしてると「はよ本題に入れ!!!」とハラハラしたり、残り30秒を切っているのに明らかに結論に到達できそうにないのを見て残念に思ったり、エキサイティングな時間でした。
 私もひと枠いただいて、『九州の人に知ってもらいたい たのしい 測量・地理情報スポット』と題して、九州にある測量や地理地図的な関心スポットを紹介いたしました。 先月のFOSS4G KANSAI でも『関西の人に知ってもらいたい~』を発表しており、今年はこのシリーズでLTをやって参ります。 KANSAIの直前にあったジオ展でも何人かの方から「いつものLTやるんですか?」と訊ねられるなど、こんな話ばかりする人、という認識が定着しつつあるように感じます。 いや、もうちょっとスゴい事に詳しい人って認識してもらえるようになりたいんですが(笑)。
 膨大な資料枚数で、何度リハっても7分を切れなかったのですが、様々な工夫と割り切りのおかげで本番ではジャスト5分で全てのスライドを紹介仕切りました。自称「自力2.5倍速再生」と呼ぶスピードトークをお聞きくださったみなさん、ありがとうございました。以下は発表資料です。
speakerdeck.com
 そういえば懇親会で「あれは全部行ったんですか?」と質問いただきました。答えはYes。発表に使用した写真はすべて、実際に私が行って私自身で撮影したものです。これ説明しておかないと、机上で検索して紹介しただけのコタツ発表資料なのかどうか分からなかったですね。ご指摘ありがとうございました。

セッションデイ懇親会

 すべてのセッション終了後は同じ部屋で配置換えをしての懇親会へ。お店でやる懇親会も「しっかり食べられる」という面では魅力的ですが、会場でやる懇親会は人が流動し、色々な人とお話ができるのが良いですね。登壇者の方に、もう少し詳しい話や裏話(?)などを聞かせていただいたり、私のLTを聞いてくださった方から「面白かった」「興味を持った」というお言葉をいただいたり等、楽しい時間でした。地理情報については「(私の発表のような)現物を見る会」的な切り口で集まりを開いたり作ったりできたら面白いなと思うのですが、やるなら本気で運営したいので手を出せていないところです。ゆるゆると連絡取り合える状況を作っておくと、会合などをやりやすくなる気もするので、興味ある方はぜひ表明してください。

ブログを書こう!

 私、こんなこと(イベント終了後になんらかのレポートやメモなどを書くこと)を35年近くやっているのですが、最近「家に帰るまでが○○イベント」とか言い出しちゃう人がいて残念に思っています。正しくは「ブログを書くまでが○○イベント」です!!! ブログを書くことは、自分のための振り返りや記録という面もあるのですが、それ以上に、新しい人がイベントに来てくれるきかっけのひとつにもなり得ると考えています。ほら、公式の案内や短文のSNSで誰かが何かを書いていても、あまり雰囲気が分からないじゃないですか。 今まで参加したことのないイベントに参加するのは少しだけパワーの要ることだし、行く前にどんな雰囲気なのかを知りたいと思うでしょう。
 なので、今回FOSS4G KYUSHUに参加して「良かったな」と感じた方には、ぜひブログを書いてほしいと思っています。網羅する必要は全然ないので、あなたが印象に残った1,2個でも、雰囲気が楽しかった、熱気を感じたという話など、「あなた視点でのFOSS4Gイベント」を書いてもらえたら、こういったものを書く習慣をつけていただけたら、嬉しく思います。こういった積み重ねが、新たにFOSS4Gに参加してくれる人に届いて、イベントでの新しい出会いを拡げることにつながるのです。ぜひ、ぜひ、ぜひ(大切なことなので3回)。

まとめ

 今年は国内各地でたくさんのFOSS4Gが開催されています。北海道(2024"年度")、大阪、福岡(東海幹事)、北海道(2025"年度")、東京など。毎度たくさんの人からたくさんの事を教えていただけて、「趣味でGISに触れている」と言いつつもよい感じに門前の小僧になれている実感があります(そう、そしてあくまでも「門前」なんですよね。。仕事にしてみたい気がだんだん盛り上がってはいるのですが。。。)。
 各イベントの開催幹事のみなさん、特に今回は東海幹事の皆さん、ありがとうございました。今回もすばらしいイベントでした!

 そういえばこのエントリでは "FOSS4G"を知っている前提で書いていますが、知らない人向けに一応書くと、FOSS は「フリーOSS(オープンソースソフトウェア)」 4 は 「for」、G は "Geospatial" ということで「地理情報(位置情報、GIS)に関するOSSについて語り合う場」です。衛星からデータ扱い、点群、人流、そしてビジュアライズ手法まで幅広いので、位置情報などに興味がある方はぜひタイミングの合うFOSS4Gイベントを覗いてみてください。

 最後に今回のロゴ on スタッフTシャツ。「東海」のイベントはいつも楽しげなイベントロゴデザインを作ってくれる人がいるのですが、今回は九州各地域が「なぞの生き物」として登場する味わい深いもの。思わず色々な生き物を探してしまいますね。