平面直角座標系8系原点

RubyKaigi2023 の帰り道にレンタカーで「平面直角座標系の 8系原点」に行ってきました。

平面直角座標系についての基礎知識は、こちらで:わかりやすい平面直角座標系 | 国土地理院

平面直角座標系のモニュメント

 平面直角座標系の原点はキリの良い座標を半ば機械的に(?)決めたものなので、リアルのその地点自体に特に意味があるものではありません。海の上だったり、深い山奥だったり。しかし、いくつかの原点は、その土地の方によってモニュメントが作成されていたりもします。有名なのは熊本県にある2系原点ですが、こちらは私も訪問したことがあり(ここのブログには書き忘れていたようですが)、講演時には時々紹介することもあります。2系原点のモニュメントはTOKYO測地系日本測地系)で表した際の131度/33度 の位置に設置されています。
 もう一カ所、モニュメントがあることで有名なのが、8系の原点。こちらに今回訪問してみました。

公園の中にある8系原点

 2系原点(TOKYO測地系)が山の斜面に頑張って原点モニュメントを(張り出すような台を構築して)設置したのに対して、長野県にある8系原点は非常に恵まれたことに、公園の中にあります。しかも公園の利用を妨げないちょうど良い隅っこの位置に。この場所に、現地の土地家屋調査士の皆さんたちが原点モニュメントを作成してくれました。東経138度30分、北緯36度。
 近づくにつれてどんどんとはやる気持ちを抑えて安全運転で国道141号を北上。駐車場に車を停めると、まもなくすぐの場所に原点モニュメントが見えます。ちなみに写真では4本の柱が垂直に立っているものが目につきますが、これは「鐘」であり、原点はその奥に見える4本の足が四角錐に組まれた下にあります。

8系原点と対面

 ようやくやってきました!何年もの間、訪問の機会を伺ってきたもので、本当にRubyKaigiバンザイです!




左にあるアクリル板は何?

 この原点標は2009年に作成されました。南牧村さん、長野県の土地家屋調査士会のみなさん、長野県の公共嘱託登記土地家屋調査士協会のみなさん、そして協賛のニコン・トリンブルさん、素敵なモニュメントをありがとうございます!
 さて、このモニュメントの真ん中にある金属標「1級基準点 101」ですが、単なるモニュメントではなく、測量上も意味のある公式の1級基準点です。8系原点ですので、前述の通り 138度30分/36度 の位置に正確に設置されています。ところが、2011年の東日本地震により、地表が26cmほど動いてしまったそうです。そこで、同年8月に測量をしなおして、新たな原点位置を示す表を設置したのが左側のアクリル板というわけです。

 ただ、私もよく分からなくなってしまったのですが、それは「本当の原点はどっち?」ということです。私は訪問するまでは「新しく設置した位置が "正しい原点" になった」と考えていたのですが、

  • 測量成果を確認すると、1級基準点101 という名称の金属標の位置は 138°30'/36°0' ちょうどであると(再測量の結果)明記されている
  • 現地に2009年からある金属標は 101の刻印がある(移設により廃止したら表面を削るなどの無効化処理をするはず)
  • 新たに設置した金属標はアクリル板に覆われていて、錘を垂らす際に正確な位置に当てられないような気がする(詳しくないのでよくわかりませんが)

というあたりから、測量上は今までの101標を138°30'/36°0'と見なし、新標はあくまでも参考なのかなと考えましたが、実際のところはどうなのでしょうか。詳しい方がいたら教えていただきたいところです。

 いずれにせよ、最初に勢いで設置したまま放置するのではなく、必要に応じて再測量をしたり、おそらくときどき手入れをしているであろう状態(放置していたらこんなにきれいな状態にはならないです)に、ご尽力されている皆さんに感謝です。
経緯などはこちらでも紹介されています→ 第Ⅷ系測量原点 | 長野県土地家屋調査士会
(「第2編に続く」をお待ちしています!)

保護石にもコダワリが

 四隅を囲っている「保護石」。この石にもこだわりがありました。それぞれ別の地域から持ってきているのです。

南側(手前):静岡県・河津海岸の石

東側(右側):山梨県笛吹川中流の石

北側(奥):新潟県・魚野川中流の石

西側(左側):長野県・千曲川源流の石


こういうのを自分の家(お庭)でやろうと思った時、石の持ち帰り許可とかはどうやって取ったらいいんだろう。勝手に拾ってきて良いものではないですよね、きっと。 一個くらいなら(販売目的で大量に採掘するのでなければ)良いのだろうか。(注:いまのところやるつもりはないです(笑))

ちなみにGPSによる位置

 GPSでは本地点は、N 36°0.003' 、E 138°29.999' と表示されました。GPSの精度を考えるとかなり良い感じで「原点」を示していると言えると思います。
こんな精度ですので、「新点」と「101点」では本機では差は得られませんでした。なお金属標の標高は 1237.541m なので、GPS表示 1242m というのも、まぁこんなものなのでしょうね。
 ちなみに本地点のジオイド高は 43.851 ということで、日本国内ではかなり厚いほう(重い場所)と言えるかと思います。


こちら、この場所で一番年期が入っているように見える看板。

 

松本のついでに・・・・

 ここから先はおまけの話です。
冒頭で「RubyKaigi 2023の帰り道に」とさらっと書きましたが、正直なところ「関東から松本市に行った帰りに(長野県の)南牧村なんかに寄る人は、私以外に絶対いるはずがない」と思っていたんですよ。どう考えても、普通には「帰り道」ではない場所です(そういう捻った往路や復路、私は多いんです)。

 そしたら、ですよ。RubyKaigiに参加された方が帰りしなに、この8系原点の最寄り駅である佐久広瀬駅に寄っているというじゃないですか。びっくりしました。
expaさんとはその当時面識はなく、というかコレを書いているのは7月中旬ですが今だに直接はお会いしたことはないのですが、帰りの新幹線の中で書き込みに気づき、嬉しさのあまり速攻リプしてしまいました。改めて確認してみると、私がこの少し南側にある野辺山駅に立ち寄ったちょうど1時間後に電車で野辺山駅に停車されていたようです。

 佐久広瀬駅は、谷の中にぽつんとある感じの駅が面白そうだなと、私も立ち寄りを計画していました。8系原点と(車なら)目と鼻の先にあるその駅、私の行動スケジュールがややディレイしていたこともあって、「見られたら見てみたいけど無理するほどではない」という判断から、行くのを断念して次の予定に向かってしまっていました。愛好家の方が目標地点にするくらいの駅だったら、行っておけば良かったなぁと、ちょっと後悔。
 なお、私は15:05には8系原点を去っているので、寄っていたなら15:15頃には佐久広瀬駅、10分程度の滞在と考えても、15:54到着と思われるexpaさんの電車とは遭遇できなかったようです。後から「あのとき降りてきたあなた!」「あの時ホームに居ながら、乗りもしなかったあなた!」とか言い合えたら面白かったですねぇ(笑)。

 ちなみに、8系原点の場所(左側の赤い四角)と佐久広瀬駅(右側の赤い長方形)の位置関係です。次の目的地へは橙色の国道を左上に抜けていったのですが、寄り道として途中で右側に降りて駅を見に行こうというのが当初のプランでした。超ニアミス。
(地理院地図)

 駅というものは私にとって、この時点では「その地域で見ることのできる 楽しい物のひとつ」くらいだったけど、その後も expaさんにTwitter上で色々教えてもらったりして、なんか気になる存在になってしまいました。今まで以上に優先度が少し上がりそうです。

松本の「ついで」情報

 RubyKaigi2023 で訪問した松本市の「ついで」に立ち寄った場所としては、ここで紹介した「平面直角座標系VIII系原点」が最大の目的地だったのですが、これ以外にも、たくさんの「ついで」を体験してきました。最高の飛行場とか最高のJR駅とか釜飯とかetc。それらの模様は note のほうに書いているところですので、面白そうだなと思った方はご笑覧いただければ幸いです。
https://note.com/search?q=sakaik%20%23rubykaigi2023&context=note&mode=search&sort=new

 帰りは軽井沢駅で車を返して、新幹線で上野方面へと帰りました。トヨタレンタカーの「県内ワンウェイ無料」という素晴らしいシステムのおかげで、松本→(いろいろ)→8系原点→(いろいろ)→軽井沢駅、というルートが成立したのですが、残念なことに2023年7月からは県内のワンウェイにも料金がかかるようになってしまいました。支店間でうまく車両を回せると良いのだけど、そうでない場合には空車回送が多くなって割が合わないと判断されたのだろうなぁ。。トヨタレンタの最大の魅力がこのワンウェイシステムだったので、本当に残念です。 今までも、市内→空港、という利用方法を(やや贅沢ではあるのですが一番時間効率が良かった)していたので、地域によってはこれにも追加料金がかかってしまい、本当に本当にトヨタレンタカーさん、残念。。