徹底抗戦

 

徹底抗戦

徹底抗戦


 どうもこの人は好きになれない。 だが、他人への評価というのは好き/嫌い、の軸以外に凄いと思う/思わない の軸もあって、この軸では彼はとてつもなくすごいと思っている。ゼロから会社を立ち上げあの規模まで育て上げた実績は、その実績を持たない何人たりとも批判することはできない。後年、金で金を稼ぐようなフェーズに入ってからはおかしな事になってしまったが、虚業に手を染める前には実業にて一定の規模にしているのだ。その規模にすら批判者の99%は到底達することはできないだろう。 できもしない人間ができた人間に対して批判ごっこをしているのは己の不足さを満足させるための「やっかみ」「ひがみ」「愚痴」以外の何物でもない。


 さて、ライブドア事件として2006年から世間を大騒ぎさせているホリエモンこと堀江貴文氏。逮捕後に為される報道のほとんどは弱いものいじめの様相を呈し、マスコミ各社に勤めるみなさまの日常の鬱憤の良きはけ口になっているという印象を強く受けていたものの、肝心の本人側の言い分は弁護団を通して為される「悪いことはやっていない」という意味のことばかり。情報が偏っているのがずっと気になっていた。 そこで今年3月に出たばかりの本書。アタリかハズレかどきどきしながら手に取ってみることにした。
 まぁ随分と軽く作られたなという印象はぬぐえない本ではあった。堀江さん自身が、あまり細かい部分を気にせずに編集者に好き勝手に編集をやらせていることもあるかもしれないが、そうだとしたらもう少し「自分の言葉」がどう伝わるのかを気にしたほうが良いと感じた。そのことで随分様々な点でも損をしてきたのではなかろうか。
 内容に関しては、逮捕前の事業のこと、逮捕、拘留、裁判の話などを、今まで殆ど語られることのなかった堀江さん自身の立場から文字にされているという点が新鮮だった。「俺はすごいんだ、あいつらは全然すごくない」的な表現(特に自分が去った後のライブドアに対して)は鼻につくが、全体として姿勢が前向きで、ちょっとバカな部分を含めて自分自身にもバカ正直で(我慢が効かないとも言うかもしれない)、稼いだ額に応じた多少の贅沢はしているものの時間を無駄にするような贅沢は一切していないという点はさすがだなと感じる。 あまり人の話を聞かない人だなという印象は以前より強かったが、自分が他の誰よりも考えているしその考えも優れいているという自信(思いこみ)があるから他人の声など聞く価値がないように思えるのだろうが。



 だから、本書を読み終わって改めて思う。
 やっぱりこの人は好きになれない。 でもすごいとは、思う。


.